日本大百科全書(ニッポニカ) 「エンネアデス」の意味・わかりやすい解説
エンネアデス
えんねあです
Enneades
古代ギリシアの哲学者プロティノスの主著。その死後、弟子ポルフィリオスは師の論稿を校訂し、これを大まかに内容分類し、9編ずつ六つのグループに分けて出版した。6巻各9章よりなる。『エンネアデス』という書名は「九篇(へん)集」の意味である。他の弟子が編纂(へんさん)した著作集もあったが、今日に残るのはポルフィリオスの版である。これらはすべて、彼が弟子たちとともにもった講筵(こうえん)(シュヌーシア。今日の「演習(セミナー)」にあたる)に由来するもので、本来、少数の弟子たちの間での回覧のためのものであった。執筆は50歳以後、死に至るまでであった。彼は目が悪かったため、読み返して手を加え、書き改めることをしなかったといわれる。その論じ方は、相手と議論しながら、問題を提出し、解決していくという方式で、相手を哲学の思索のうちに引き入れることを目的とした。第1集は主として倫理学と美学、第2集と第3集は自然学と宇宙論、第4集は心理学、第5集と第6集は形而上(けいじじょう)学、論理学、認識論の問題をそれぞれ主として取り扱っている。
[加藤信朗]