エンベル・パシャ(読み)えんべるぱしゃ(英語表記)Enver Pasa

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エンベル・パシャ」の意味・わかりやすい解説

エンベル・パシャ
えんべるぱしゃ
Enver Pasa
(1881―1922)

青年トルコ人革命に活躍した軍人、政治家。イスタンブールに生まれ、陸軍士官学校、陸軍大学卒業。参謀少佐として第3軍に配属され、マケドニア地方のゲリラ平定作戦に従事する。統一と進歩委員会(青年トルコ党)サロニカ本部の有力メンバーとなり、1908年7月、憲法復活を要求して山岳地帯に潜入、蜂起(ほうき)し、青年トルコ人革命を成功させた。憲法復活後、ベルリン駐在武官となった。イタリアのリビア侵略によるイタリア・トルコ戦争(1911~1912)や、またバルカン戦争(1912~1913)で国民的英雄となり政権へ接近した。1913年クーデターにより、ジェマル、タラートとともに三頭政治を開始、短期間に昇進して将軍パシャ)となった。汎(はん)ツラン主義を主張した。親ドイツ政策を推進し、第一次世界大戦にドイツ側にたって参戦を指導した。敗戦後ドイツに脱出、モスクワを経てトルキスタンに至り、汎ツラン主義によるトルコ人独立運動を指導し、1922年にソ連赤軍との戦いで戦死した。

[設楽國廣]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エンベル・パシャ」の意味・わかりやすい解説

エンベル・パシャ
Enver Paşa

[生]1881.11. イスタンブール
[没]1922.8.4. バルジュバン近郊
トルコの軍人,政治家。政治結社「青年トルコ」 (→青年トルコ革命 ) の指導者として 1908年セサロニキで陸軍士官の武装蜂起を組織。バルカン戦争 (1912~13) ののちクーデターによって青年トルコ内閣を成立させ,みずからは陸相参謀総長として実権を握った。第1次世界大戦にはドイツと同盟して参戦,敗戦後 19年ソ連に亡命し,21年中央アジアのブハラでトルコ系住民の民族運動 (→バスマチ運動 ) を指導したが,運動は 22年ソ連軍によって鎮圧され,戦死した。

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