日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオアカウキクサ」の意味・わかりやすい解説
オオアカウキクサ
おおあかうきくさ / 大赤浮草
[学] Azolla japonica Fr. et Sav.
アカウキクサ科の常緑性シダ。冬季は紅葉する。本州、四国、九州の水田や池沼に分布。アカウキクサ科の植物は全世界で6種が知られるが、日本にはこの種と静岡県以西にみられるアカウキクサの2種が分布するのみである。名が示すように浮遊性のシダで、葉は2列に互生し、上下2片に裂ける。上片は水面に浮かび光合成を行うが、水に接した面には穴があり、この中に、遊離窒素を固定する藍藻(らんそう)の1種であるアナベナが共生している。下裂片は薄く、水中に没している。異型胞子をつくるシダで、雌性の胞子嚢果(ほうしのうか)には、1個の大胞子を入れた大胞子嚢が一つ含まれている。雄性の胞子嚢果には、多数の小胞子が集まった球状体を数個入れた小胞子嚢が、数多く含まれている。冬季になると小豆(あずき)色に紅葉するが、これはカエデ類の紅葉と同様にアントシアン系の色素が形成されるためである。水面をびっしりと覆ったこのシダが赤く色づいたようすは美しく、「満江紅(マンチヤンホア)」という中国名が似つかわしい。このアカウキクサ類は、稲作の妨げになる水田雑草として日本では嫌われているが、中国や東南アジアでは良質の稲作用緑肥と考えられている。ベトナムなどではアカウキクサをアヒルなどの飼料としている。薬草としても利用され、中国では利尿、発汗の作用があるとされ、ニュージーランドのマオリ人はのどの痛み止めにこのシダを噛(か)むという。
[栗田子郎]