改訂新版 世界大百科事典 「オオヒキガエル」の意味・わかりやすい解説
オオヒキガエル
giant toad
marine toad
Bufo marinus
耕地の害虫駆除の目的で,世界の各地に移入されているヒキガエル科の1種。オオヒキガエルはヒキガエル属Bufoの最大種で,雄は体長12cm,雌は雄よりも大がらで体長15~20cm,最大は23.8cm,体重1.3kgにも達する。しかし変態直後の子ガエルはわずか1.2cmほどにすぎない。眼の後方にある耳腺はヒキガエル類の中でもとくに大きく,分泌される液は毒性が強いため,人の眼や粘膜に付着すると危険であり,また,卵も強い毒性を持つといわれる。アメリカ合衆国のテキサス州南東部からメキシコ,中央アメリカを経て南アメリカのアルゼンチンのパタゴニア地方まで広く分布し,平地の森林や耕地のほか汽水域にも見られる。繁殖期は雨量に関係して不定であり,1匹の雌はシーズン中に2万ないし3万5000個もの多数を産卵する。貪食(どんしよく)で,昆虫,トカゲ,小哺乳類などの小動物を見さかいなく捕食する。本種は1800年代から,主としてサトウキビ畑の害虫ハイイロカンショコガネを駆除する目的で,1844年のジャマイカをふりだしに世界の各地に移入され,定着した。日本では小笠原諸島の父島と母島に,ムカデ退治の目的で戦後導入され,増殖しているが,原産地の個体群よりも小型化している。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報