アルキン(読み)あるきん(英語表記)alkyne

翻訳|alkyne

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルキン」の意味・わかりやすい解説

アルキン
あるきん
alkyne

アセチレンHC≡CH(C2H2)の同族体で一般式CnH2n-2で示される三重結合をもつ一連の脂肪族不飽和化合物の総称。この系列の最初の物質はアセチレンであるので、アセチレン系炭化水素ともいう。天然には存在せず合成によって得る。分子内に炭素‐炭素三重結合C≡Cを1個有し、その結合の長さは120ピコメートル程度であり、直鎖状の結合をしている。これはアルカンの単結合(154ピコメートル程度)、アルケンの二重結合(134ピコメートル程度)よりも短い。アルキンの三重結合は1個のσ(シグマ)結合と2個のπ(パイ)結合からできており、π結合があるため各種の試剤の付加を受けやすい。

[徳丸克己]

製法

アセチレンは天然ガスまたはナフサから工業的に製造されている。そのほかのアルキンをつくるには、メチルアセチレン(アリレン)を例とすると、次の反応を用いる。


このとき、アレンはほとんど生成しない。これはアレンが不安定であるので、安定なアセチレンができる傾向が強いからである。

[徳丸克己]

反応性

アルキンの三重結合には種々の物質が付加する。たとえば、臭素1分子がアセチレン1分子に付加すると1,2-ジブロモエチレンのトランス型が生成し、さらにもう1分子の臭素が付加すると、1,1,2,2-テトラブロモエタンとなる。塩化水素がアセチレンに付加すると、まず塩化ビニルポリ塩化ビニル原料)を生じ、さらに塩化水素が付加すると、1,1-ジクロロエタンとなる。またシアン化水素がアセチレンに付加するとアクリロニトリル(アクリル系繊維や合成樹脂の原料)を生ずるが、現在工業的にはアクリロニトリルは主としてプロピレンから製造される。同様に、酢酸はアセチレンに付加して酢酸ビニルを生ずる。水もアセチレンに水銀塩を触媒(これの流出したものが水銀による中毒をもたらした)として付加し、アセトアルデヒドを生ずるが、現在アセトアルデヒドは工業的にはもっぱらエチレンから製造されている。メチルアセチレンに水が付加すると、アセトンが得られる。

 このほか、加圧下でアセチレンにアルコールや一酸化炭素が付加する反応をレッペ反応といい、種々の有用な化合物の合成に利用された。

 アルキンの三重結合の炭素に結合している水素は酸性を示すので、各種の金属とアセチリドとよばれる塩をつくる。この塩にヨウ化メチルを作用させると、アルキンの水素がメチル基で置き換わったアルキンをつくることができる。次に例を示す。


またアセチレンを直接加熱、あるいは種々の触媒と処理すると重合がおこる。反応条件によりベンゼンやビニルアセチレンHC≡CH=CH2が得られる。

[徳丸克己]


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アルキン

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