化学式CO。炭素,または炭素化合物が不完全燃焼するときに発生する無味,無臭,無色のきわめて有毒な気体。天然ガス以外の都市ガス中にも含まれる。ギ酸を濃硫酸,または濃リン酸で脱水したり,炭酸カルシウムCaCO3を亜鉛末と加熱して得るが,ニッケルカルボニルNi(CO)4を約200℃に加熱すれば純粋なものが得られる。工業的には,赤熱したコークスに空気や水蒸気を反応させて発生炉ガス,水性ガスとし,あるいは天然ガス(メタン)の部分酸化などにより合成ガスとして製造される。
2C+O2─→2CO(発生炉ガス)
C+H2O─→CO+H2(水性ガス)
2CH4+O2─→2CO+4H2(合成ガス)
CとOとの結合距離は0.113nmで,その結合は⁺C-O⁻,C=O,⁻C≡O⁺の3種の共鳴構造をとっていると考えられており,Oが部分的に正,Cが部分的に負に荷電している。融点-205℃,沸点-191.5℃,水に難溶性だが,エチルアルコール,ベンゼン,酢酸などには溶ける。引火性で,空気中で青色の炎をあげて燃え二酸化炭素(炭酸ガス)CO2になる。800℃以上で比較的容易に炭素と二酸化炭素とに分解する(2CO─→C+CO2)。水蒸気とは可逆的に反応する(CO+H2O⇄CO2+H2)。還元性が強く,多くの金属酸化物を還元する。また金属と反応し,金属カルボニル化合物を形成する。
前記の発生炉ガス,水性ガスなどの主成分として工業用気体燃料となり,また有機合成の重要な出発原料で,これよりメチルアルコール,ギ酸,あるいは酢酸メチル,ベンズアルデヒドその他いろいろなアルコール,アルデヒド,ケトンなどがつくられる。その還元性を利用して,金属製錬用還元剤としても広く用いられる。
→合成ガス →水性ガス →発生炉ガス
執筆者:大瀧 仁志
一酸化炭素はヘモグロビン(血色素)と酸素の250倍もの親和性をもっているため,組織への酸素の運搬能力を低下させることにより酸素欠乏をひき起こす。血中のCOヘモグロビン濃度が80%で急性死亡,5%で中枢神経系障害が発生する。酸素欠乏にもっとも敏感な大脳,次に心筋が機能低下を起こして,頭痛,息切れ,易疲労性,記憶欠損,悪心,めまいなどから,歩行失調,虚脱,失神,昏睡,呼吸停止に至る中毒症状をもたらす。一酸化炭素は蓄積性がないので慢性中毒は起こさないが,軽症の急性中毒が繰り返されると,中枢神経系障害や心筋障害が蓄積されて,疲れやすさ,頭痛,めまい,もの忘れなどの症状が出る。かつてガス配管工などに多発した,いわゆる〈慢性一酸化炭素中毒〉や,冬のいろりから発生する一酸化炭素によるもので長野県鬼無里村などで問題になった〈信州心筋症〉がその例である。一酸化炭素は自動車排出ガスの規制対象物質であり,環境基準は8時間平均値20ppm,日平均値10ppm以下となっている。これは時間識別能が低下するCOヘモグロビン濃度2%に対応している。
執筆者:溝口 勲+塚谷 恒雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
酸素が不十分な状態で、炭素または炭素化合物が燃焼するときや、二酸化炭素(炭酸ガス)を高温でコークスによって還元するとき生じる気体。ボンベ入り(ボンベの色は灰色)で市販されている。石炭、石油などを多量に消費する工場地帯の大気中では、かなりの量に達することもあり、自動車の排気ガス中にも含まれる。
[守永健一・中原勝儼]
工業的には、コークスまたは石炭を原料としてつくる。熱したコークスに空気を通すと、一酸化炭素と窒素の混合物(発生炉ガス)が得られ、また、水蒸気を通すと、一酸化炭素と水素との混合気体(水性ガス)が得られる。いずれも気体燃料である。
2C+O2―→2CO(発生炉ガス法)
C+H2O―→CO+H2(水性ガス法)
実験室では、ギ酸を濃硫酸中に滴下して脱水してつくるが、純粋なものはニッケルカルボニルNi(CO)4を200℃で分解して得られる。
[守永健一・中原勝儼]
無色無味の有毒気体で、無臭であるだけにたいへん危険である。高温では還元剤として働き、多くの金属酸化物を還元して金属を生成する。水に溶けにくい。常温、常圧では水酸化ナトリウム水溶液と反応しないが、高温高圧下では反応してギ酸塩となる。空気中で点火すると青白い炎をあげて燃え二酸化炭素となる。ハロゲン、硫黄(いおう)など非金属元素と結合する。また、高温で遷移金属元素と金属カルボニル(ニッケルカルボニルなど)とよばれる化合物をつくる。適当な温度、圧力、触媒などでいろいろな合成反応の原料となる。たとえば、水素との直接結合によりメタノール(メチルアルコール)、アルケンに対し水素とともに反応してアルデヒドを生じる。
一酸化炭素の物理的性質は窒素ガスにたいへんよく似ている(原子価電子の総数が同じであることに注意)。一酸化炭素のC-O結合距離は113ピコメートルで、アルデヒドやケトンなどのカルボニル化合物のC-O距離122ピコメートル(二重結合)より短く、三重結合に近いものと考えられている。
[守永健一・中原勝儼]
発生炉ガス、水性ガスなどの主成分として工業用気体燃料、また金属の冶金(やきん)に還元剤として広く用いられる(溶鉱炉中の酸化鉄の還元Fe2O3+3CO―→2Fe+3CO2など)。一酸化炭素そのものやホスゲンCOCl2をつくり、これらを出発物質として各種化合物を合成することも重要な用途の一つとなっている。
[守永健一・中原勝儼]
毒性が強く、空気中での許容濃度は50ppmとされる。血液中のヘモグロビンと結合し、その作用を阻害するためである。また引火性が強く、空気と混合すると、きわめて爆発しやすい。
[守永健一・中原勝儼]
一酸化炭素
CO
式量 28.01
融点 -205.0℃
沸点 -191.5℃
密度 気体 1.25g/L(0℃,1気圧)
(比重) 液体 0.814(測定温度-195℃)
溶解度 2.3mL/100mL(水20℃)
臨界圧 36atm
CO(28.01).炭素または可燃性炭素化合物が不完全燃焼するとき発生する.工業的には,コークスを原料として,
2C + O2 = 2CO(発生炉ガス法),
C + H2O = CO + H2(水性ガス法)
の反応により,または天然ガス(メタン)の部分酸化,
2CH4 + O2 = 2CO + 4H2
によってつくられる.実験室では,ギ酸を濃硫酸で脱水して得られる.原子間距離C-O 0.113 nm.双極子モーメント0.10 D でC+-O-,C=O,-C≡ O+の三つの共鳴混成体と考えられている.無色無臭の気体.融点-205 ℃,沸点-191.5 ℃.水に難溶.水100 mL に対する溶解度は2.3 mL(20 ℃).活性炭に容易に吸着される.空気中で燃えて二酸化炭素になる.各種の重金属酸化物を還元して金属にする.アルカリ水溶液と反応させるとギ酸塩を生じる.塩化銅(Ⅰ)の塩酸水溶液,またはアンモニア水溶液と反応して [CuCl2CO]-,[CuCO(NH3)]+ などの錯体を生じる.この反応は,一酸化炭素の吸収分析に利用される.水素からはメタノール,メタノールからはギ酸メチル,酢酸メチルの合成が可能で,有機合成工業の重要な原料である.ニッケルは容易にカルボニル化合物となり,コバルト,その他との分離が可能になるので,ニッケルの精錬に利用される(カルボニル法).血液中のヘモグロビンと結合してカルボニルヘモグロビンとなり,ヘモグロビンの機能を阻害するのできわめて有毒であり,空気中10 ppm でも中毒を起こす.[CAS 630-08-0]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
… 現在,ガソリンエンジンは乗用車用エンジンをはじめ,オートバイ,小型のトラック,バスや特殊自動車,モーターボート,軽飛行機の原動機として利用されているほか,農林・水産・土木・建設・一般産業用の各種小型作業機の駆動にも広く用いられている。
[公害対策]
ガソリンエンジンは現在小型の自動車駆動用として多数使用され,その排気ガス中に含まれる一酸化炭素CO,炭化水素HC,窒素酸化物NOxは大気汚染の原因としてきびしく規制されている。これらの成分の生成原因の概要は,COは燃料の不完全燃焼により,HCは燃焼室壁面での消炎,失火や,混合気の素通りにより生じ,またNOxは空気中の窒素と酸素が燃焼時の高温により反応して生成される。…
※「一酸化炭素」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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