日本大百科全書(ニッポニカ) 「オキナワキチヌ」の意味・わかりやすい解説
オキナワキチヌ
おきなわきちぬ / 沖縄黄茅渟
Okinawa seabream
[学] Acanthopagrus chinshira
硬骨魚綱スズキ目タイ科ヘダイ亜科に属する海水魚。沖縄島、石垣島、台湾、香港(ホンコン)の沿岸に分布する。上顎(じょうがく)の左右各側に4列または5列、下顎の左右各側に2列または3列の臼歯(きゅうし)がある。側線の始部に不鮮明な黒斑(こくはん)がない。胸びれの基底上端に黒点がない。全長約60センチメートル。背びれ棘(きょく)部中央下の上方横列鱗(おうれつりん)数が5枚であることで、4枚のキチヌとナンヨウチヌおよび6枚のクロダイと異なる。沖縄島では沿岸域に生息し、産卵期に汽水域に侵入しない。稚魚は晩春~真夏に沿岸でみられる。水産上重要種であるが、仔稚魚(しちぎょ)の生態についてはほとんど知られていない。成魚や成熟魚は、沖縄では沿岸の中層で定置網、刺網(さしあみ)、底延縄(そこはえなわ)などで漁獲される。市場価値は高い。肉は白身で、刺身、塩焼きなどにするとおいしい。本種はA. australisと同定されていたが、2008年に新種として記載された。ミナミクロダイに似るが、本種は眼下骨の下縁が白いこと、腹びれと臀(しり)びれは淡色または黄色であること、側線鱗数は44~47枚であること、臀びれ第2棘が長く、頭長の1.5~1.8倍であることなどで区別できる。環境省の海洋生物レッド・リストで絶滅危惧(きぐ)Ⅱ類に指定されている。
[尼岡邦夫 2018年1月19日]