おこう野村(読み)おこうのむら

日本歴史地名大系 「おこう野村」の解説

おこう野村
おこうのむら

日本海に面した函石はこいし(現熊野郡久美浜町)を中心とする砂丘地帯にあったと伝える幻の村。「おんごの村」「しばこ」ともいう。函石浜は東は浜詰はまづめより西は葛野かずらの(現久美浜町)に至る砂丘で、大昔、西北方からの強風が吹き寄せる飛砂によって、田畑から家屋敷まで埋められたため、全村が山裏の安全な地帯に移転したと伝える。この伝承を有する村は、鹿野かの・葛野(現久美浜町)上野うえの俵野たわらの溝野みぞの(現網野町)で、この五村は分村の時、いずれも村名に「野」をつけたという(熊野郡誌)。なおこの地には「いつもりの長者」の伝説が残る。

この浜辺は一名夕日ゆうひの浦ともいわれるが、江戸時代初期頃より、年々砂防のための植樹がなされた。現久美浜町字湊宮みなとみや一帯にある西天橋さいてんきようでは慶長七年(一六〇二)以来一〇年間にわたり毎年、松五〇〇本、茱萸三〇〇本を植えたと伝え(熊野郡誌)、また寛政元年(一七八九)俵野村明細帳(俵野区有文書)に字あがやまの宝暦四年(一七五四)以来の防風植林の事績が詳しく記される。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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