強い風による風圧で生ずる直接の被害と、強風に伴って生ずる間接的な被害とがある。強い風は、日本の場合、台風によるものがもっとも多く、ついで冬の北西の季節風、発達した低気圧、そのほか竜巻(たつまき)や「おろし」など局地的なものがある。
風圧は風速の二乗に比例するから、風速が増大すると風圧は急激に大きくなる。また「風の息」といって、風は短い周期で強くなったり弱くなったりしている。もっとも強くなったときの風速を瞬間風速、10分間平均したものを平均風速という。普通、瞬間風速は平均風速の1.5倍くらいであるが、海上ではこれより小さく、都会などではこれより大きい。
家屋に被害が出るのは、だいたい平均風速で毎秒20メートルくらいからで、25メートルを超すと大きな被害が出る。30メートルを超すと電柱は倒れ、50メートル以上では家も樹木も倒壊する。60メートルを超すと送電線の鉄塔は折れ曲がる。1978年(昭和53)2月28日の夜、東京の荒川の鉄橋上で、36トンもある電車の車両が吹き倒されたが、このときの最大瞬間風速は52メートルで、竜巻に伴う強風であった。大きなものの倒壊は、単に風圧だけでなく、物体の固有振動が風の息の周期と一致することも大きな原因となる。
強風に伴う被害としては、高潮、風浪、潮風、フェーン、風食などによる海難、火災、農作物の被害などがある。風害の大きかったのは、1934年(昭和9)9月21日の第一室戸(むろと)台風、1954年(昭和29)9月26日の洞爺丸(とうやまる)台風、1959年9月26日の伊勢湾(いせわん)台風による強風の被害をあげることができる。
[安藤隆夫]
異常に強い風によって生ずる被害の総称。風の強さは普通10分間平均風速で示されるが,最大瞬間風速で示されることもある。日本の気象官署では前者で約70m/s,後者では約85m/sの記録がある。建物などの場合には風速の2乗に比例する風圧が破壊と関係が深く,また一様な風よりは,風の乱れあるいは風の息が被害を増大させることが知られている。また風の息の周期が建造物の固有振動周期に近いときは共振を生じて破壊されることが多いので,高層建物やつり橋などの設計に際しては,自然の風の周期と異なった振動周期をもつように設計されるのが普通である(耐風設計)。風害は建物,樹木などに直接破壊を生ずる以外に,高潮や高波あるいは塩害を生じて間接的に大きな被害を生ずる場合もある。
風害を生ずるような強い風の原因は,日本の場合は,冬の千島付近の発達した低気圧と夏の台風である。ともに強風域は広い範囲に及ぶが,台風の場合にはとくに強いのは台風の眼の外側の比較的狭い範囲で,しかも台風進路の右側が一般に強い。また,季節風や台風の風は一様に吹くのではなく,地形の影響で,山裾や谷沿い,峠の風下など狭い地域に集中して吹くことがあり,広戸風,清川だしなどのように,風の吹きやすい場所が決まっているところもある。一方,竜巻やダウンバーストなどのように,台風などよりはるかに空間スケールの小さい気象現象に伴う強風もある。最近では高層建築物の周辺に局部的に強風が生ずるビル風があり,人工的なものなので公害問題となる場合もある。
執筆者:中島 暢太郎
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…風洞内に実際の風(実風)に相似な風を再現し,数百分の1の縮小模型を用いて振動の発生機構,振動により構造骨組みに加わる力の量的評価がなされる。 建物自体の耐風安全性の問題とは別に,建物周辺の風害対策も耐風設計の一課題である。地表面に比べて建物頂部では風速が一般に大きくなることから,建物頂部付近の高風速の風が建物の外壁に沿って地上へ導かれることにより,高層建物の周辺では風害が生ずることがある。…
※「風害」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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