オセアニア神話(読み)おせあにあしんわ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オセアニア神話」の意味・わかりやすい解説

オセアニア神話
おせあにあしんわ

オセアニアの諸民族に伝わる神話。オセアニアは文化史的には東南アジアの延長地域であり、オーストラリアの先住民の祖先は、およそ4万年前に東南アジアより移動してきたといわれている。メラネシアミクロネシアポリネシアも、やはり新石器時代に東南アジアから人々の移動があり、同時にタロイモヤムイモなどの栽培作物、ブタイヌなどの家畜が伝えられた。神話もこうした歴史的背景のもとに、東南アジアや中国南部に伝わるものと類似したものが存在している。オセアニアの各地域に伝わる神話を概括すると、ミクロネシアとポリネシアには宇宙起源神話が発達し、虚無のなかから宇宙が形成されてゆく過程を語るもの、とくに天を持ち上げて大地からの分離を語るものが広く分布している。またメラネシアやオーストラリアでは、すでに存在している宇宙のなかで、人間、言語、火、死などの起源を語る神話が特徴的にみられる。オーストラリアを除く3地域では、島を海中より釣り上げる話など、海洋的な性格をもった神話が存在している。

[青柳まちこ]

ポリネシア

広く行き渡っている要素は、天と地の結婚、階層的な天、天の追放、およびマウイ所業などである。創世神話としては、暗黒や無から何ものかが生じてしだいに進化していく進化型と、最初から資源となる卵状のものが存在し、そこから諸物が生み出されていく型がある。

[青柳まちこ]

ミクロネシア

天地創造神としては、アルラッペ(中央カロリン諸島一帯)、ヤラファース(ヤップ)が神話のなかで語られ、パラオではシャコガイから生まれたウァブが殺され、倒れて島々が形成されたと伝えている。

[青柳まちこ]

メラネシア

民族ごとに多様な文化を示すメラネシアでは、共通の神々や創造神話を求めることは困難である。創造神によってつくられた神々やトーテム動物と人間との関係を説明したり、文化のさまざまな要素の起源を語る神話がある。

[青柳まちこ]

オーストラリア

中央部、北部、北西部では、動植物のトーテム起源神話が特徴的であり、南部では、人間以外のものが人間のように行動する話や英雄譚(たん)が特色となっている。またヨーク岬半島には、ニューギニア南東部の神話と類似したものが多く、歴史上の交流が認められる。

 なおオセアニアにおいてのキリスト教化の進展は、諸民族に伝わる神話にも反映し、聖書に登場する話と伝統的神話との混合形態も多く報告されている。

[青柳まちこ]

『大林太良編『世界の神話――万物の起源を読む』(NHKブックス)』『A・アルパーズ編著、井上英明訳『マオリ神話』(1982・サイマル出版会)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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