シャコガイ(読み)しゃこがい(英語表記)giant clam

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャコガイ」の意味・わかりやすい解説

シャコガイ
しゃこがい / 硨磲貝
giant clam

軟体動物門二枚貝綱シャコガイ科に属する二枚貝の総称。この科Tridacnidaeは、西太平洋インド洋に7種が分布する。殻は大形で厚く、前後に長い卵形。殻表には太い放射肋(ろく)があり、その上では成長脈は立ち上がり、ときにはひれ状突起となっている。腹縁には放射肋に応じて波状の凹凸がある。軟体は一般の二枚貝類と上下が逆の体制になっていて、足糸は前背縁の大きな足糸窩(か)から出る。また、後閉殻筋が中央に寄っていて、前閉殻筋を欠いている。外套膜(がいとうまく)には単細胞の藻類ズーサンテラZooxanthellaが共生し、シャコガイは共生藻類の光合成に都合のよいように腹を上に向け、外套膜縁を殻の外に広げている。その外套膜縁には、光を感じると思われるレンズのある眼点がある。共生藻類はシャコガイによってすみ場所が与えられ、シャコガイは光合成によって生じる酸素と栄養分を利用しているものと思われる。共生藻類の光合成のできなくなる水深40メートル付近がシャコガイの生息深度の限界である。

 オオジャコガイTridacna gigasは世界最大の二枚貝で、最大殻長1.4メートル、重量230キログラムになる。殻表の放射肋は高く、腹縁は鋭い。成貝では足糸開口を欠いている。殻は大形で深いため、現地人は水盤などに利用した。また、サンゴなどとともに仏教経典では七宝(しちほう)の一つに数えられた。ヨーロッパでは聖水盤として教会の入口に置かれ、洗礼に用いられる。沖縄以南に分布する。ヒレナシジャコガイT. derasaは殻長50センチメートル、殻幅、殻高とも30センチメートルに達し、やや前後に長い。放射肋は低く、その上にひれ状突起はほとんど立たない。ミクロネシアに分布する。ヒレジャコガイT. squamosaは殻長20センチメートル、殻高、殻幅ともに14センチメートルほどである。殻表の5本の太い放射肋の上には大きいひれ状突起がある。足糸開口は大きい。四国の太平洋岸以南に分布する。ヒメジャコガイT. croceaの殻は卵円形で、殻長10センチメートル、殻高7センチメートル、殻幅4センチメートルほどしかない。シャコガイ類中もっとも小形種である。殻表の放射肋は低く、この上に数多くの低い鱗片(りんぺん)がある。殻色は白色のみならず、象牙(ぞうげ)色、黄色、橙(だいだい)色などになる。足糸開口部は広い。サンゴの中に埋もれて生活し、外套膜のみを穴の上に広げている。紀伊半島以南のサンゴ礁にすみ、沖縄では本種を食用としている。シラナミガイ(ナガジャコガイ)T. maximaは殻長20センチメートル、殻高、殻幅とも10.5センチメートルである。殻は前後に長く、殻表には太い放射肋が6本あり、この上に鋭いが低い鱗片状突起がある。殻は白色で、ヒメジャコガイのような色彩をもつことはない。足糸開口は広く、そこから堅固な足糸を出し、サンゴや岩上に固着する。

 シャコガイ科には以上の5種のほか、シャゴウガイHippopus hippopusおよびミガキシャゴウガイ(チャイナ・クラム)H. porcellanusの2種が属している。

[奥谷喬司]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シャコガイ」の意味・わかりやすい解説

シャコガイ
Tridacnidae; giant clam

軟体動物門二枚貝綱シャコガイ科の貝の総称。6種から成る。殻は大きく,重厚堅固。殻表には太い放射肋があり,肋上に鱗状突起を生じることもある。他の二枚貝類と異なり,生時は殻頂を下にして造礁サンゴ類の上にすむので軟体は上下逆になり,両殻の前縁の間から足糸を出して地物に付着し,後閉殻筋は中央に移り,前閉殻筋を欠く。外套膜には藻類 Zooxanthellaが共生しており,殻の間から外套膜を出して日光に当てて藻類に同化作用をさせる。外套膜には光を集めるためのレンズ状の構造があり,藻類のため黒や青などに彩られている。太平洋,インド洋のサンゴ礁に分布する。なお,本科に含まれるオオジャコガイ Tridacna gigasは世界最大の二枚貝で,通常殻長 45cm,殻高 30cmほどであるが,殻長 140cm,重さ 230kgにもなるものもある。沖縄以南のサンゴ礁に分布しており,殻は現地住民が貯水のための水盤としたほか,教会では聖盤として洗礼に用いた。ほかにヒレジャコガイ T. squamosa,シラナミガイ T. maximaなどがある。

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