オゾン層破壊(読み)オゾンそうはかい

百科事典マイペディア 「オゾン層破壊」の意味・わかりやすい解説

オゾン層破壊【オゾンそうはかい】

大気中に放出されたフロン(電子部品の洗浄剤,冷蔵庫・エアコンの冷媒,クッションなどの発泡剤,エアゾルの噴射剤などに広く利用)が上昇してオゾン層に達し,強力な太陽光線を受け,オゾン層を破壊すること。フロンは決して分解されることなく成層圏に達し,そこで太陽紫外線を受けて分解され,放出された塩素原子はオゾン分子を次々に破壊する。このため有害な紫外線が地表に届いて皮膚癌白内障を発症させることから,新たな環境問題となった。これまでの研究から,オゾンが1%減るごとに地表に達する有害な紫外線の量は2%増加,皮膚癌の発病率は5%から7%増加することがわかっている。1974年6月カリフォルニア大学のローランドモリーナがオゾン層破壊のメカニズムに関する一連の研究を《ネイチャー》に掲載,1985年3月英国南極観測所の研究者ファーマンが成層圏オゾン量の著しい減少を確認,〈南極上空のオゾン量は,1970年代の値に比べて40%以上も減った〉という論文を発表した。続いて米国航空宇宙局が同年10月,宇宙衛星〈NIMBUS7号〉を打ち上げてオゾン量を調べた結果,南極の春(9〜10月)の上空にオゾン濃度が低くなっている円形状の〈オゾンホール〉が存在し,それが南極大陸全体に広がりつつあることを発見した。このあとフロン規制は世界的に急ピッチで進んだ。
→関連項目産業公害生物多様性フロン代替材料有機塩素化合物UVカット商品冷媒

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知恵蔵 「オゾン層破壊」の解説

オゾン層破壊

地上10〜50kmの成層圏に、大半のオゾンが滞留。それが、太陽光に含まれ皮膚がんを起こす有害な紫外線を吸収、生物を守っている。1970年代末から南極上空の成層圏で部分的にオゾンが減少するオゾンホールができ、2000年には過去最大の、南極大陸の2倍の面積に広がった。日本でも沖縄以外で減少が続く。オゾンを破壊する化学物質の特定フロンのCFC(クロロフルオロカーボン=chlorofluorocarbon)、ハロン(消火剤)、四塩化炭素(フロン原料)などを規制するため、1985年3月にオゾン層の保護のためのウィーン条約、87年9月にモントリオール議定書採択(97年改正)され、段階的な規制を定めた。日本は88年にオゾン層保護法を制定、ハロン、四塩化炭素、1.1.1‐トリクロロエタン(洗浄剤)、CFC、代替ハロンのHBFC(ハイドロブロモフルオロカーボン=Hydrobromofluorocarbon)の生産を95年までに全廃。臭化メチルは05年、代替フロンHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン=Hydrochlorofluorocarbon)は20年から全廃。しかしCFCは使用が認められ、規制は不十分だ。UNEP(国連環境計画=United Nations Environment Programme)の98年の報告書は、各国が議定書を守ればオゾン層の破壊のピークは2020年までに訪れ、成層圏の破壊物質の濃度は50年までに1980年以前に戻る、と予測している。

(杉本裕明 朝日新聞記者 / 2007年)


オゾン層破壊

成層圏のオゾン層(高度10〜50km)が破壊されること。1980年代初め、日本の南極観測隊がオゾンの異常減少を発見。85年、米国の気象衛星「ニンバス7号」がオゾンの減少域の拡大を観測し、オゾンホールと名付けた。成層圏オゾンは、太陽からの有害紫外線(UV‐B)の多くを吸収し、地上の生態系を保護するが、オゾンが減少すると有害紫外線の地上到達量が増え、皮膚がんや白内障が増える危険がある。成層圏オゾンは、成層圏の大気を暖め、地球の気候に大きく関わる。オゾン層破壊の原因に、フロン(クロロフルオロカーボン/CFCs)の大気中への放出がある。成層圏に達したCFCsは紫外線により解離し、生じた塩素原子がオゾンの酸素原子と結合して一酸化塩素を作り、オゾンを壊す。また南極上空の超低温域にある氷晶(極成層圏雲/PSCs)が作り出す塩素酸化物もその一因。南極域では80年代初めから春季を中心にオゾン全量が極端に少なくなる現象がほぼ毎年出現。オゾン全量は全世界で減少し、国内でも札幌などで減少傾向、有害紫外線の増加が危惧される。

(饒村曜 和歌山気象台長 / 宮澤清治 NHK放送用語委員会専門委員 / 2007年)

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