日本大百科全書(ニッポニカ) 「モリーナ」の意味・わかりやすい解説
モリーナ
もりーな
Mario J. Molina
(1943―2020)
アメリカの化学者。メキシコのメキシコ・シティで生まれる。1965年メキシコ国立自治大学(UNAM)卒業。ドイツのフライブルク大学に進学し、1967年修了後UNAMに助教授として戻る。1968年カリフォルニア大学バークリー校に入り物理化学を専攻、1972年に博士号を取得。翌1973年カリフォルニア大学アーバイン校のS・ローランドの研究室に移り、フロンによる環境破壊をテーマに研究を始める。フロンは産業的につくりだされた化合物で、大気中に蓄積してきていることは知られていたが、当時は環境に対して影響はないと考えられていた。実際フロンは低い高度では安定で環境になんの影響も及ぼさないが、高いところで太陽光にさらされるとフロンは分解し、その分解物がオゾンを破壊することがわかり、1974年にこの成果を発表した。この発表は社会的に大きく取り上げられ、フロンガス全廃へのきっかけとなった。1982年大学を離れてジェット推進研究所へ転出する。さらに1989年にはマサチューセッツ工科大学に移り、1997年同大学教授となる。オゾンの形成と分解に関する大気化学の研究に対し、S・ローランド、P・クルッツェンとともに1995年のノーベル化学賞を受賞した。
[馬場錬成]