改訂新版 世界大百科事典 「オーブリエチア」の意味・わかりやすい解説
オーブリエチア
purple rock cress
Aubrietia deltoidea DC.
南ヨーロッパから小アジア原産のアブラナ科の耐寒性多年草。和名ムラサキナズナ。属名はフランスの植物画家オーブリーC.Aubrie(1651-1743)にちなむ。草丈10cmくらいで分枝して,茎ははうようにして茂り,ひし形の葉をつける。3~5月の間に,茎先に紫色の十字形小花を多数つけ,最盛期には株一面に花をつけて美しい。花色は,紫色のほか赤紫色,桃色,白色などがあり,最近は八重咲きの紫色花の品種も作出されている。ムラサキナズナ属Aubrietiaは地中海域に10種あまりが分布し,園芸のオーブリエチアはこのムラサキナズナだけでなく,他の野生種とも交配され,品種改良が進められたものが多い。地をはうように茂る草性を利用して,ロックガーデンによく用いられる。夏の高温多湿に弱いので,冷涼地以外では,春または秋に種子をまいて一~二年草的に育てることが多いが,品種によっては不稔で種子をつくらない。越夏株から秋に挿芽をして殖やして栽培することもある。
執筆者:柳 宗民
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報