日本大百科全書(ニッポニカ) 「カイヤット」の意味・わかりやすい解説
カイヤット
かいやっと
André Cayatte
(1909―1989)
フランスの映画監督。1940年代から1970年代にかけて活躍した。カルカソンヌ生まれ。弁護士出身で、社会正義をテーマとした作品を数多く手がけた。弁護士として働きながら、6本の小説を書き、マルク・アレグレMarc Allegret(1900―1973)監督の『俳優入門』(1938)の脚本を書いたのをきっかけに映画界に入った。1942年に『偽りの情婦』で監督デビュー。1950年に裁判所を舞台にした『裁きは終わりぬ』はベネチア国際映画祭で金獅子賞、ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した。その後死刑をテーマにした『我々は皆殺人者である』(1952)、誤って殺人を犯す若者たちを描く『洪水の前』(1954)を発表し、法廷三部作といわれた。カイヤットもオータン・ララやドラノワと同じく、ヌーベル・バーグの監督たちから、古臭いアカデミズムの監督として非難された。遺作は1978年の『問題の愛』。
[古賀 太]
資料 監督作品一覧(日本公開作)
貴婦人たちお幸せに Au bonheur des dames(1943)
火の接吻 Les amants de vérone(1949)
二百万人還る Retour à la vie(1949)
裁きは終りぬ Justice est faite(1950)
洪水の前 Avant le déluge(1954)
黒い書類 Le dossier noir(1955)
眼には眼を Oeil pour oeil(1957)
両面の鏡 Le miroir à deux faces(1959)
ラインの仮橋 Le passage du Rhin(1960)
俺は知らない Le glaive et la balance(1963)
シンデレラの罠 Piége pour Cendrillon(1965)
愛のためいき La vie conjugale(1966)
先生 Les risques du métier(1967)
カトマンズの恋人 Les chemins de Katomandou(1969)
愛のために死す Mourir d'aimer(1971)
愛の終りに Verdict(1974)
愛の地獄 A chacun son enfer(1977)