ベネチア国際映画祭(読み)べねちあこくさいえいがさい(英語表記)Mostra internazionale d’arte cinematografica

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベネチア国際映画祭」の意味・わかりやすい解説

ベネチア国際映画祭
べねちあこくさいえいがさい
Mostra internazionale d’arte cinematografica

イタリアベネチアリド島で、毎年8月末から9月初頭に開催される国際映画祭。1932年に隔年開催のベネチア・ビエンナーレの映画部門として始まり、1934年から各年開催へと移行した。しだいにファシスト政権のプロパガンダ的な性格が強まり、第二次世界大戦中の1943年から1945年までは中断を余儀なくされた。また戦後の1969年から1979年までは、フランスの五月革命の余波で、コンクール部門が停止されるなど、しばしば政治によって翻弄(ほんろう)される悲運に見舞われた。国際映画製作者連盟が公認し、コンクール部門を有する映画祭としては、もっとも長い歴史を誇り、後発カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭と並んで世界三大映画祭に数えられている。現在はコンクール部門のほかに、世界映画の新しい潮流を紹介する「映画の地平(オリッゾンティ)」や実績のある作家の映画を上映する「コンクール外」などの部門を有する。第1等である金獅子賞の受賞作に与えられる翼を持った獅子トロフィーは、町の守護聖人である聖マルコを象徴している。

 1950年代には、黒澤明(くろさわあきら)の『羅生門(らしょうもん)』(1950)に金獅子賞、溝口健二(みぞぐちけんじ)の『西鶴(さいかく)一代女』(1952)、『雨月物語』(1953)、『山椒大夫(さんしょうだゆう)』(1954)に3年連続して銀獅子賞を与え、日本映画の時代劇が国際的に注目されるきっかけをつくった。現代劇では、稲垣浩(いながきひろし)の『無法松一生』(1958)と北野武の『HANA-BI』(1997)に金獅子賞を授与しているほか、塚本晋也(つかもとしんや)(1960― )や三池崇史(みいけたかし)(1960― )、園子温(そのしおん)(1961― )など気鋭の監督の作品を積極的に紹介している。

[西村安弘]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベネチア国際映画祭」の意味・わかりやすい解説

ベネチア国際映画祭
ベネチアこくさいえいがさい
Mostra Internazionale d'Arte Cinematografica di Venezia

イタリアのベネチアで催される国際映画祭。初回は 1932年。当初,隔年形式をとったが,1934年の第2回から毎年開催されるようになった。第2次世界大戦のため 1943年から 1945年まで中止。設立初期は,自由な映画祭として高い評価を得ていたが,しだいにファシズム国家の影響を帯びた映画祭と化し,国際的信用を失墜させた経緯がある。また戦後も,1968年に映画監督のピエル・パオロ・パゾリーニたちからその商業的姿勢を非難されて一時中止,完全に再開できたのは 1980年になってからである。日本映画では,黒沢明の『羅生門』(1950)がグランプリのサン・マルコ金獅子賞を獲得して以来,『雨月物語』(1953,銀獅子賞),『七人の侍』(1954,銀獅子賞),『無法松の一生』(1958,金獅子賞),『ジャングル大帝』(1966,銀獅子賞,→手塚治虫),『HANA-BI』(1997,金獅子賞)などが受賞した。

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