改訂新版 世界大百科事典 「イヨカン」の意味・わかりやすい解説
イヨカン (伊予柑)
Citrus iyo Hort.ex Tanaka
1~3月ころ出荷される,赤橙色で独特の風味をもつかんきつ類の一つ。ミカン科の常緑広葉樹。1886年ころ,現在の萩市で発見されたが,名は育ちの地,伊予にちなむ。樹高3~5m。枝条にわずかにとげを生ずる。葉はやや小さくいくぶん上向く。5月上・中旬に開花し,花は白色5弁で中程度の大きさ。おしべは20~25本で花粉は稔性。果皮は比較的厚いが,むきやすい。果肉は黄橙色で柔軟多汁。種子は10~20個あり,単胚性。果実の重さ約250g。品種は,普通伊予柑,突然変異した早生の宮内伊予柑,さらに,果面が滑らかに変異した大谷伊予柑がある。宮内伊予柑が最も多く栽培されている。主産地は愛媛県で約8割を占める。主に生食されるが,一部果汁原料にされている。生食では感じないが,加工工程中苦味を生ずる。苦味成分はリモノイド。マーマレードにも利用される。酸濃度は1~1.5%,糖度は12~13%で食味は良い。
執筆者:山田 彬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報