日本大百科全書(ニッポニカ) 「ザボン」の意味・わかりやすい解説
ザボン
ざぼん
[学] Citrus maxima (Burm.) Merr.
Citrus grandis Osbeck
ミカン科(APG分類:ミカン科)の常緑高木。ブンタン(文旦)ともいう。名は、ポルトガル語名のzamboaに由来する。中国名は朱欒。マレー原産の熱帯、亜熱帯性果樹であるが、17世紀には日本でもみられたと推定される。葉は大きく20センチメートルにも達し、大きな翼葉がある。初夏に白色4~5弁の花を単生または少数の総状花序につける。雌しべは大きく、雄しべは二十数本。果実は10月から2月に熟し、厚い果皮をもち大きく、葉とともに柑橘(かんきつ)類中最大である。古来、実生(みしょう)繁殖が繰り返されたために変異が多く、果肉も淡乳白色から紅紫色まであり、とくに紅紫色の系統をウチムラサキとよぶ。
[飯塚宗夫 2020年10月16日]
栽培
九州、四国の南部の暖地に諸品種が栽培されているが規模は小さい。ヒラトブンタン(平戸文旦)は長崎県松浦郡平戸村(現、平戸市)原産で、1845年(弘化2)に実生から生じた。果実は短球形で600グラムから1キログラム、果皮は平滑で淡黄色、果肉は緑色を帯びた淡黄色で、淡い苦味があり、種子が多い。12月に収穫し、5月ころまで出荷される。バンペイユ(晩白柚)は1930年(昭和5)台湾から鹿児島県に導入されたもので、果実は球形で2キログラム以上にもなる。果皮は表面は平滑で淡黄色、内層部は白色綿状で、果肉は淡黄色で汁が多い。2月ころ収穫し、5月まで貯蔵できる。マトウブンタン(麻豆文旦)は台湾南部の主要品種で、中国大陸南部から伝わった。果実は卵形で500~800グラム、果肉は緑色を帯びた淡黄色で10~12月に収穫する。アンセイカン(安政柑)は広島県因島(いんのしま)で安政(あんせい)年間(1854~1860)に実生から得られた。果実は扁球(へんきゅう)形で500~600グラム、皮はむきやすく、香気がある。12月に収穫する。これらのほか、文旦漬けに向くホンダブンタン(本田文旦)、高知県に多いトサブンタン(土佐文旦)、交配育成種のタニカワブンタン(谷川文旦)などがある。
[飯塚宗夫 2020年10月16日]
食品
生果100グラム中のビタミンCは45ミリグラム、炭水化物は10.7グラム、カルシウム13ミリグラム、リン19ミリグラムを含む。ザボンはさわやかな香気と風味に加え、果実の大きさも手伝って、南国暖地をしのび、郷愁を誘う果物として親しまれてきた。また文旦(ぼんたん)漬けもよく知られている。その製法は、油胞を含んだ黄色の表皮を削り取り、皮に切り目を入れて10片内外に剥皮(はくひ)する。それを水に入れて約1時間沸騰させ、その後流水で苦味のなくなるまで洗い流す。この場合に皮が柔らかすぎれば、塩化カルシウム0.3%液に短時間浸してから水洗いする。水けをよくきり、30%糖液に浸し、2~3分間沸騰させて一昼夜放置する。その後40%糖液を用い同様な処理をし、さらに50%、60%と繰り返して、70%以上に高まったときに乾燥させ、白砂糖をまぶして仕上げる。
[飯塚宗夫 2020年10月16日]