日本大百科全書(ニッポニカ) 「カウディーリョ」の意味・わかりやすい解説
カウディーリョ
かうでぃーりょ
caudillo
19世紀初め、独立後の旧スペイン領ラテンアメリカ諸国に輩出した強大なボス的政治指導者のこと。しばしば独裁者の同義語とみなされる。19世紀前半では、いずれも大統領となったメキシコのアントニオ・ロペス・デ・サンタ・アーナ、ベネズエラのホセ・アントニオ・パエス、アルゼンチンのファン・マヌエル・ロサスがその代表的なものである。カウディーリョは一般にカリスマ的な資質を備え、個人的魅力や大胆さ、雄弁、金銭などで多くの追従者を獲得し、軍事闘争や権力闘争を通じて自己の支配を強固なものとした。カウディーリョによる統治や政治支配をカウディリズモとよび、その伝統はこの地域の政治史を強烈に特徴づけている。20世紀に入って、教育の普及や近代西欧民主主義的な政治意識の成長などにより、古典的なカウディーリョは姿を消したが、このタイプの政治指導者は今日でも依然としてこの地域に存在している。
[加茂雄三]