カッシニ家(読み)カッシニけ(その他表記)Cassinis

改訂新版 世界大百科事典 「カッシニ家」の意味・わかりやすい解説

カッシニ家 (カッシニけ)
Cassinis

フランスの天文学者一族。4代続いてパリ天文台長をつとめた。初代台長のジョバンニGiovanni Domenico CもしくはJean Dominique C.(1625-1712)は,イタリアに生まれ,イエズス会の学校で学問を修めた後,占星術師としてボローニャ貴族の天文台に招かれる。1656年ボローニャ大学の天文学教授に就任,教皇庁の天文学の顧問も兼ねる。すい星や太陽,惑星などを望遠鏡で観測し,自転周期,木星の衛星の運動などについて新しい事実を加える。新たに生まれたフランスのアカデミー・デ・シアンスに招かれ,さらに新設のパリ天文台の初代台長に就任して,69年フランスに帰化した。土星の環にある間隙カッシニの隙間),土星の衛星の発見,月の自転に関するカッシニの法則の提案などの業績を挙げ,また測地学にも手を染め,フランスの全国的測量に着手したが,これは息子から孫に受け継がれて完成されることになった。

 2代目はジャックJacques C(1677-1756)で,パリ生れ。幼少から父親に天文学などを学び,コレージュ・マザランで勉学,イタリア,オランダ,イギリスなどを訪れ,子午線観測を行うとともに,I.ニュートン,E.ハリー,J.フラムスティードらと知り合う。アカデミー会員で,パリの経度の決定(1718)などにかかわる。地球の形状では,ようやくフランスにも登場し始めたデザギュリエJ.T.Désaguliers(1683-1744),モーペルテュイP.L.M.de Maupertuis(1698-1759)らのニュートン派と対立して,縦長説を堅持し,父親の説を強く擁護した。3代目で,テュリ伯となったセザール・フランソワCésar François C(1714-84)と4代目のジャック・ドミニクJacques Dominique C.(1748-1845)は協力して〈カッシニ図〉と呼ばれるものを1793年に完成させた。これはフランス全土の8万6400分の1という大縮尺図(全182葉)で,その後における各国地形図の範となった記念すべき作品である。しかし,水平関係はほぼ正確であるが,〈けば〉を用いた山地の表現は科学的というにはほど遠い。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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