翻訳|geodesy
地球の大きさと形状,およびその時間的変化を研究対象とする学問体系。一般の測量学と異なり,地球の曲率が考慮される。大測量学,測地測量学ともいう。
測地学はその方法によって幾何測地学と物理測地学とに大別される。前者はおもに光学的方法によって幾何学的に地球の寸法を測定する方法であるが,後者は重力ポテンシャルが考慮される方法である。三角測量や三辺測量は前者に,水準測量や重力測量は後者に分類される。しかし地表上で実施されるすべての測地測量は多かれ少なかれ地球重力場の影響を受ける。たとえば計器を水平に設置するということは,重力ポテンシャルが等しい面に沿って設置する,あるいは重力ベクトルに垂直な面上に設置するということであり,この意味において両者を厳密に区別することはできない。
古くは地球の静的な大きさと形状だけが測地学の対象であったが,近年の計測技術の進歩により,地球の変形が時間とともに測定できるようになり,測地学の領域が著しく広がった。地球の自転速度の変化,チャンドラー章動(チャンドラー周期),潮汐をはじめ,プレートの運動,広域地殻変動に至るまで広く測地学の研究対象となった。現在では,地球上の任意の一点の位置を三次元的空間座標(測地緯度φ,経度λ,高さH)に時間tを加えて,四次元的に表現するための学問技術を測地学と定義するようになった。
地球の時間的変形を高精度で計測するためには,変形をある程度予測が可能なものにしておく必要が生じる。そのためには,地球の変形の物理学的モデルを設定し,変形のプロセスを数学的に記述しなければならない。こうして今日では,地球力学が測地学の重要な一部を占めるにいたった。
人工衛星の出現は近年の測地学を飛躍的に進展させた。1958年NASA(ナサ)によって打ち上げられたバンガード1号の軌道の時間的変化から,東京天文台の古在由秀は地球の扁平率を1/298.25と求めた(最新の値は1/298.257)。この研究を皮切りに,人工衛星軌道から地球の形状を求める衛星測地学がにわかに測地学の主流となった。衛星測地学は地球の重力ポテンシャルを求めるだけではなく,衛星を動く三角点とする衛星三角測量法や,衛星から発射される電波のドップラー効果を用いたり,あるいはレーザー技術により衛星と地上点との距離を直接に測定する衛星測距法を生み出した。人工衛星出現以前には,大陸間の測地測量の座標系は互いに独立していて,接続されることはなかった。しかし衛星測地学は独立した測地座標系を互いに結合して,全地球上の空間的位置を統一した一つの座標系の上に置くことを可能にした。今日では,さらに位置の時間的変化をも加えて,全地球的な変形をとらえる試みがなされている。超長基線干渉計(VLBI。電波干渉計)によるプレート運動や大規模地殻変動の検出は代表的な試みといえよう(宇宙測地)。
地球の表面の約70%は海洋である。地球の形状はすなわち海面の形状といっても言い過ぎではない。海面が形成する静的な形状(平均海面)はもとより,大規模な海面変動はそのまま測地学の研究対象といってよい。衛星搭載のレーザー高度計は海面高度とその時間変化を海洋上くまなくキャッチする有力な武器として登場した。今日,衛星測地技術を通して,測地学の海洋物理学への急速な歩み寄りがみられる。
測地学は国境を越えた座標系の結合を必要とするため,早くから国際的な話合いの場が設けられた。1862年,ヨーロッパ各国の測量を一つの測量網に統一しようという意図から,中部ヨーロッパ測地学協会が結成され,のちにこれが全世界的な万国測地学協会に発展した。この協会が発足当初から採用した,国家を会員とする制度は,のちに設立された多くの国際学会の手本となった。
1919年,地震学をはじめ各種地球物理学の進展に伴い,国際測地学・地球物理学連合International Union of Geodesy and Geophysics(IUGG)が発足し,万国測地学協会は国際測地学協会International Association of Geodesy(IAG)としてIUGGに含まれることになった。IAGは5分科に分かれ,第1分科から第5分科まで順に,測地測量網,衛星測地学,重力測定,理論測地学とデータ処理,測地データの物理学的解釈を主題としている。潮汐と地殻変動は第5分科に属する。各分科にはトピックに応じて,委員会と特別研究グループが設置され,それぞれの設置目的に応じて国際的活動を続けている。IAGは最新のデータに基づいて,そのつど,測地測量の基準となる地球の赤道半径,扁平率,万有引力定数,自転角速度等の最も信頼性の高い数値を発表している。
IUGGへの日本の対応機関は日本学術会議第4部付置地球物理学研究連絡委員会であり,IUGGの7協会に対応する7分科会により構成されている。測地分科会委員は日本の測地測量業務を分担する建設省国土地理院と海上保安庁水路部をはじめ,文部省緯度観測所,大学の研究者等のなかから選出される。選挙母体は日本測地学会である。
執筆者:萩原 幸男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
地球の形、大きさを求め、その変化を追求するとともに、他の科学分野と協力して地球内部の構造や状態を探求する学問。測地観測に使用する機器の開発、観測結果の整約法(誤差を含むたくさんの観測データを理論に基づき、より正確で相互に矛盾のない統一した結果に計算し直す方法)についての研究も測地学に含まれる。測地学の内容は現在次のように大別されている。
(1)幾何測地学 地球の形を回転楕円(だえん)体であるとし、天文観測、測地測量などの結果から観測点の経緯度、高さを決め、それをもとに地球を表す楕円体の形と大きさを決定し、観測点と地球との位置関係を明らかにすることを中心とする。
(2)物理測地学 地球の形をジオイドで代表させ、地表の重力値の分布をもとにジオイドの形、凹凸を求め、観測点とジオイドの位置関係を求めることを主題とする。
(3)人工衛星測地学 地球を回る人工衛星の位置、距離を地上から観測することから、観測点の位置を幾何学的に決め、あるいは人工衛星の軌道変化をもとに衛星の運動理論を使って地球の形状を決定していく測地学。全地球測位システム(GPS)衛星を利用する測地学もここに含まれる。
測地学はもっとも古い学問の一つで、エジプトのエラトステネスが紀元前220年ごろに地球子午線の全長として25万スタジアという値を出したことに始まるといわれる。初期には球と考えられた地球も、測地学の進歩によって18世紀には扁平な楕円体により近いことが確認され、現在ではさらに精密な形状が明らかになっている。
[長沢 工]
『萩原幸男著『測地学入門』(1982・東京大学出版会)』▽『大野重保著『測地学の方法』(1987・東洋書店)』▽『藤井陽一郎・藤原嘉樹・水野浩雄著、地学団体研究会編『新版地学教育講座1 地球をはかる』(1994・東海大学出版会)』▽『檀原毅著『地球を測った科学者の群像 測地・地図の発展小史』(1998・日本測量協会)』▽『日本測地学会監修、大久保修平編著『地球が丸いってほんとうですか?――測地学者に50の質問』(2004・朝日選書)』
geodesy
地球の形と大きさを求め,地球上の任意の地点の位置を決定する方法を研究する地球物理学の一分野。その対象と方法とから幾何測地学(geometrical geodesy)と物理測地学(physical geodesy)とに分かれる。前者は,地球を数学的な回転楕円体と仮定し,この回転楕円体面上の図形の幾何学的な取扱いによって,測地学の課題を解決する。地球の形と大きさを求めるには,回転楕円体面上の弧長を実測し,その両端での天文学的経緯度測定の結果を用いて問題を解く。物理測地学においては,地表を等ポテンシャル面と仮定し,この等ポテンシャル面上の重力異常の分布を求め,Stokesの公式によりジオイドの凹凸を求める。このようにして求められた地球の形は,地球内部の物質分布の不規則さを反映しているものであるから,逆に地球内部の状況を知る資料ともなる。現代の測地学の主要な課題の一つは,各国測地系を統一する均一な汎世界的測地系(world geodetic system)の樹立である。この目的のための幾何測地学は,従来のように経度・緯度ではなく,三次元直交座標を使って測地系の問題を議論する三次元の測地学(three-dimensional geodesy)となった。一方,物理測地学から得られるジオイドの凹凸,鉛直線偏差などの諸量はもともと絶対的なものであるから,汎世界的測地系の設定に当たって物理測地学は本質的に大きな役割を果たす。さらに近来著しく発展した測地学の分野に人工衛星を利用する衛星測地学(satellite geodesy)がある。
執筆者:藤井 陽一郎
出典 平凡社「最新 地学事典」最新 地学事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…地球を物理学的方法によって研究する地球科学の一分野。固体としての地球(岩石圏)を取り扱う測地学,地震学,火山学,地磁気学などと,地球表面あるいは近傍の水圏および気圏を取り扱う海洋学,気象学,陸水学,超高層物理学などの2大分野に大別される。測地学は地球の形,大きさ,内部構造などを測地観測の結果をもとに議論し,また地殻の変動を議論する。…
※「測地学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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