日本大百科全書(ニッポニカ) 「カメガイ」の意味・わかりやすい解説
カメガイ
かめがい / 亀貝
sea butterfly
[学] Cavolinia tridentata
軟体動物門腹足綱カメガイ科の貝。海産浮遊性の種で、殻は巻かず台形でカメの甲を連想させるのでこの名がある。殻長は20ミリメートルぐらい、飴(あめ)色で半透明。背殻は膨らみが弱く、3本の縦畝(たてうね)があり、腹殻より前縁が長く伸びひさし状である。腹殻は丸みがあって膨れ、成長線が明瞭(めいりょう)である。殻口は背縁と腹縁の間にスリット状に開き、両殻のあわさるところは側方に棘(とげ)のような突起状に出る。足は他の腹足類のようにはうのに適しておらず、あたかもチョウの翅(はね)のように左右2枚に分かれていて、これを動かして泳ぐため、本種の属するカメガイ科は翼足類とよばれるグループに属する。世界中の温帯、熱帯の海流中にすみ、足に生えている繊毛(せんもう)の運動によって海中の珪藻(けいそう)を集め口に運ぶ。大風のあとは海岸に死殻が打ち上がっている。幼貝は成貝と形がまったく異なり長い三角形である。同類の他種とともに魚類や頭足類の天然餌料(じりょう)となっている。
[奥谷喬司]