カメガイ

改訂新版 世界大百科事典 「カメガイ」の意味・わかりやすい解説

カメガイ (亀貝)

カメガイ科Cavolinidaeに属する浮遊性貝類の総称,またはそのうちの1種を指す。巻貝類であるが殻は巻かず,薄い殻がカメの甲のような形をし,生きているときは左右に翼のような平たく大きい側足を出して泳ぐので,そのようすからカメガイ,または翼足類の名がある。また,英名ではsea butterflyと呼ばれる。世界の温・熱帯海域に分布し,日本にはこの類でもっとも大きいカメガイCavolinia tridentataのほか,5種が分布している。群れをなして海流に乗って遊泳し,プランクトンを食べるが,ときに海岸に多数打ち上げられることがある。カメガイは殻の長さ2cmで,淡褐色半透明。腹側の殻は膨らんで前方に細い筋がある。背側の殻は緩く湾曲して,腹側の殻より前方へ突き出る。しかし幼貝は長三角形の扁平な殻をもち,形が著しく違うので,かつては別種にされていた。シロカメガイC.gibbosaの殻は小型で白い。ササノツユガイC.gibbosa longirostrisの殻はさらに小型で黄色,背側の殻が前端で著しく腹方へ曲がる。このほかマルカメガイ,クリイロカメガイなどがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カメガイ」の意味・わかりやすい解説

カメガイ
かめがい / 亀貝
sea butterfly
[学] Cavolinia tridentata

軟体動物門腹足綱カメガイ科の貝。海産浮遊性の種で、殻は巻かず台形でカメの甲を連想させるのでこの名がある。殻長は20ミリメートルぐらい、飴(あめ)色で半透明。背殻は膨らみが弱く、3本の縦畝(たてうね)があり、腹殻より前縁が長く伸びひさし状である。腹殻は丸みがあって膨れ、成長線が明瞭(めいりょう)である。殻口は背縁と腹縁の間にスリット状に開き、両殻のあわさるところは側方に棘(とげ)のような突起状に出る。足は他の腹足類のようにはうのに適しておらず、あたかもチョウの翅(はね)のように左右2枚に分かれていて、これを動かして泳ぐため、本種の属するカメガイ科は翼足類とよばれるグループに属する。世界中の温帯、熱帯の海流中にすみ、足に生えている繊毛(せんもう)の運動によって海中珪藻(けいそう)を集め口に運ぶ。大風のあとは海岸に死殻が打ち上がっている。幼貝は成貝と形がまったく異なり長い三角形である。同類の他種とともに魚類や頭足類の天然餌料(じりょう)となっている。

[奥谷喬司]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カメガイ」の意味・わかりやすい解説

カメガイ
Cavolinia tridentata; three-toothed cavoline

軟体動物門腹足綱カメガイ科の貝。軟体の側足が左右に翼状に広がっており,これで泳ぐさまがチョウのはばたきのようにみえるのが英名の由来。温帯,熱帯の海で群れをなして浮遊生活をする。殻長 2cm。殻は褐色,半透明で薄く,巻かない。背殻はゆるやかに湾曲して前方に突き出し,腹殻は前方へ丸くふくらみ亀の甲に似た形となり,後端の左右両翼は角張り,中央部は後方へ棘状に突き出る。日本産のカメガイ科 Cavolinidaeにはほかにシロカメガイ C.gibbosa,クリイロカメガイ C.uncinata,マルカメガイ C.globulosa,ヒラカメガイ Diacria trispinosaなどの種がある。カメガイの仲間は自分の体の数十倍にもなる粘液の網を広げ,これにかかったプランクトンなどの餌を食べる。

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