カルボアニオン

化学辞典 第2版 「カルボアニオン」の解説

カルボアニオン
カルボアニオン
carbanion

有機化合物において,炭素原子上に負電荷をもつものをいう.このようなイオンは,反応中間体として生成すると考えられるものが多い.炭素-炭素,炭素-水素,炭素-金属結合が切れてカルボアニオンを生成する.ニトロ基カルボニル基シアノ基など,負電荷を分散させる置換基がα位に結合すると,カルボアニオンは安定化する.また,平衡状態において,安定な化学種として存在すると考えられるカルボアニオンもある.トリフェニルメタニドアニオンがその代表的例として知られている.

(C6H5)3CNa (C6H5)3C + Na

カルボアニオンは,一般に強い塩基である.

   C2H5OH + (C6H5)3CC2H5O + (C6H5)3CH   

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルボアニオン」の意味・わかりやすい解説

カルボアニオン
かるぼあにおん
carbanion

炭素上に負電荷をもつ3価の炭素中間体。一般式⊖CR1R2R3(R1、R2、R3は炭素で中心と結合する置換基)で示される。カルボン酸カルボキシ基カルボキシル基)-COOHやアルコールのヒドロキシ基-OHの水素陽イオンが解離すると、酸素上に負電荷をもつ陰イオンが生成するように、炭素上の水素が強い塩基の作用により水素イオンとして失われると、炭素上に負電荷をもつ陰イオンが生ずる。これがカルボアニオンで、炭素陰イオンの意味である。アセトニトリルアセトフェノン、マロン酸エステルなどでシアノ基、カルボニル基、エステル基などの陰性基に隣接する炭素上からは、水素イオンが奪われやすく、カルボアニオンが生ずる。これは陰性基と共役した二重結合に付加し、炭素‐炭素間の結合を形成する。

[徳丸克己]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルボアニオン」の意味・わかりやすい解説

カルボアニオン
carbanion

炭素陰イオンともいう。有機原子団の炭素原子に負電荷をもつイオン。実際にはその負電荷は特定の1個の炭素原子に局在せずに,その原子団全体に広がっている。安定なものもあるが,多くは反応中間体として存在する。たとえばシクロペンタジエニルアニオン,トリフェニルメチルアニオン,ニトロメチルアニオンなどは安定で,金属イオンとの間で,C5H4-K+,(C6H5)3C-Na+,O2NCH2-K+ などの塩を形成する。

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