カーシムアミーン(その他表記)Qāsim Amīn

改訂新版 世界大百科事典 「カーシムアミーン」の意味・わかりやすい解説

カーシム・アミーン
Qāsim Amīn
生没年:1865-1908

エジプトの思想家,作家出身は,ムハンマド・アリー朝下のチェルケス系支配層。ムハンマド・アブドゥフらのイスラム改革思想を〈自由主義的開明派〉の立場で継承した一人で,とくに《婦人解放論》(1899),《新婦人》(1901)によりイスラム倫理と西欧自由主義思想とを結合させようとした女性解放論者として有名。理想的文明は科学的だとするその立場には,歴史的な伝統によりイスラム自体が頽廃し,西欧の侵略がもたらされたとする,イスラム世界の危機意識が表明されていた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カーシムアミーン」の意味・わかりやすい解説

カーシム・アミーン
Qāsim Amīn

[生]1863. アレクサンドリア
[没]1908. カイロ
エジプトの思想家,社会運動家。女性の解放,向上に努めた。法律専門学校卒業後パリに留学,その地でアブドゥフらの週刊新聞『固い連結』の刊行に協力した。思想的にもジャマール・ウッディーン・アルアフガーニーやアブドゥフの革新主義に傾倒し,婦人の解放はイスラム本来の教えに立返ることであり,イスラム世界の復興は婦人が本来の自由を取戻さなければ実現しえないと信じるようになった。帰国後,弁護士,次いで判事として働きながら,1899年に『婦人の解放』 Taḥrīr al-mar'ahを刊行したが,賛否の議論が巻起り,ことに保守主義者たちの反論が激しかった。これらに答えるため,2年後に『新しい女性』 al-Mar'ah al-jadīdahを書いた。アラブ世界の近代化に貢献するところが多かったが壮齢で世を去った。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android