改訂新版 世界大百科事典 「キタキツネ」の意味・わかりやすい解説
キタキツネ
Vulpes vulpes schrencki
食肉目イヌ科の哺乳類。キツネV.vulpesのうち北海道,南千島,サハリンなどにすむ亜種。本州,四国,九州にすむホンドギツネに比べてキタキツネは,やや体が大きく,体長約77cm,尾長約42cm。白色の差毛(さしげ)が少なくて,全体に体色は黄色みが強く,前・後肢の全面にある黒の斑紋は大きく目だつなどの特徴がある。平地から高山帯まで広い範囲にすむが,主要な獲物であるエゾヤチネズミが多く狩りもしやすい草原に多く見られる。とくに牧場は,エゾヤチネズミが多いことに加えて家畜の後産などの畜産廃棄物を餌として利用できるために,キタキツネのかっこうのすみ場所となっている。雌は水はけのよい斜面に巣穴を掘り,3~4月にふつう4~6子を生む。子は夏の終りから秋にかけて親から独立し,冬には性的に成熟する。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報