キノボリヤマアラシ
prehensile-tailed porcupine
ものに巻きつけることのできる長い尾をもつ樹上生のヤマアラシ類。齧歯(げつし)目キノボリヤマアラシ科(アメリカヤマアラシ科)キノボリヤマアラシ属Coendousの哺乳類の総称。約20種がメキシコからブラジル,ペルー,ボリビアにかけての中南米にすむ。体長30~60cm,尾長33~45cm。体色は変化に富み,黄褐色から褐色,ほとんど黒色のものもある。他のヤマアラシ同様毛の変化したとげをもつが,手が幅広く,しっかりしたかぎづめを備えていて,木の枝をつかむのに適し,樹上生活を送る。とげは天敵に対する防衛的な武器として使われ,相手の体に刺さると抜け,1時間に1mm以上の割合で体に食い込んで,ときに致命的な傷を与える。夜行性で,おもな食物は,樹皮,葉,果実。雌は2~9月に1子を生む。子は赤褐色の長い毛に包まれて生まれる。背中の毛は生まれてまもなく堅くとげ状となる。近縁の種にアラスカからメキシコにかけてすむ同じく樹上生のカナダヤマアラシがある。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
キノボリヤマアラシ
きのぼりやまあらし / 木登豪猪
tree porcupine
哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目キノボリヤマアラシ科キノボリヤマアラシ属に含まれる動物の総称。この属Coendouの仲間は、メキシコから中央アメリカを経てアルゼンチン北部までの南アメリカに広く分布し、森林にすむ。頭胴長30~60センチメートル、尾長33~48センチメートル、体重1~5キログラム。体色は、背面が黄褐色から黒色まで変化に富んで保護色になり、腹面は灰色である。体は太くて短い棘(とげ)で覆われる。尾は長く、先端の上面は裸出し、物に巻き付けることができる。前後足には強くて長い鉤(かぎ)づめがある。夜行性でおもに樹上で生活し、昼間は木の茂み、樹洞、切り株や地面の穴などで過ごす。樹葉、芽や枝、果実やときに地下茎も食べる。1~9月に繁殖し、妊娠期間は60~70日で、1年に1回、普通1子を産む。子は大きくて体長25センチメートル、体重300~400グラムもある。生まれた子の棘は柔軟であるが、すぐに堅くなる。メキシコからパナマに分布するメキシコキノボリヤマアラシC. mexicanusや、東ブラジルからアルゼンチン北部に分布するトゲキノボリヤマアラシC. spinosusなど6種がいる。
[土屋公幸]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
キノボリヤマアラシ
Coendou; tree-porcupine
齧歯目キノボリヤマアラシ科キノボリヤマアラシ属の動物の総称。メキシコキノボリヤマアラシ C. mexicanus,ブラジルキノボリヤマアラシ C. prehevsilisなど約二十数種から成る。尾は長く,物に巻きつく。体は短い針状の毛でおおわれる。前後肢とも爪は長くて鋭く曲っていて,木登りに適応している。木の上で生活し,動作はナマケモノのようにのろい。夜行性。食物は木の葉,軟らかい木の枝,果実など。メキシコからパナマ,コロンビア,ベネズエラを経て,ボリビア,ブラジルまで分布する。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のキノボリヤマアラシの言及
【ヤマアラシ(山嵐)】より
…体に長く鋭い針状毛を備えた齧歯(げつし)類で,ヤマアラシ科とキノボリヤマアラシ科(アメリカヤマアラシ科)に属するものの総称。ユーラシア南部からアフリカに分布するヤマアラシ科(約3属11種)と南北アメリカに分布するキノボリヤマアラシ科(約4属10種)は,かつては系統的に近縁と考えられていたが,近年ではまったく別の系統のものとみなされている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」