日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナマケモノ」の意味・わかりやすい解説
ナマケモノ
なまけもの / 樹懶
sloth
哺乳(ほにゅう)綱貧歯目ナマケモノ科に属する動物の総称。この科Bradypodidaeには2属5種があり、おもに南アメリカ大陸の密林地帯の樹上で生活し、木の葉、花などを餌(えさ)としている。ミユビナマケモノ属Bradypusには、ブラジルに分布するノドジロミユビナマケモノB. tridactylus、ブラジル南部のタテガミナマケモノB. torquatuc、ブラジル、アルゼンチン、ボリビアのノドチャミユビナマケモノB. variegatusが、アマゾン流域、ベネズエラ、ガイアナのフタユビナマケモノ属Choloepusには、フタユビナマケモノC. didactylus、ニカラグアからエクアドルにかけてのホフマンナマケモノC. hoffmanniが含まれる。
体長50~64センチメートル、尾はみられないか、あっても短い。体重4~9キログラム。後肢はいずれの属も3指であるが、前肢はフタユビナマケモノ属では2指、ミユビナマケモノ属の場合3指で、前後肢とも全指に曲がった大きな鉤(かぎ)づめがある。樹上で生活するナマケモノは、この鉤づめで逆さにぶら下がった状態で生活するため、体を覆う長い体毛は普通の動物とは逆に腹から背のほうに向いて生える。毛には2種類の緑藻類が付着しているため雨期には緑色にみえ、乾期には褐色になる。歯は上顎(じょうがく)に5対、下顎に4対あり、エナメル質を欠き、一生伸び続ける。哺乳動物の特徴の一つに頸椎(けいつい)が7個であることがあげられるが、ナマケモノの頸椎は6~9個で、ミユビナマケモノで9個、フタユビナマケモノ7個、ホフマンナマケモノの場合は6個である。胃は複胃であり複雑で、盲腸はない。
樹上での動作は鈍く、平均時速900メートルで移動し、1日18時間はぶら下がって眠る。樹上では逆さにぶら下がるが、地面や水中では腹ばいになり、泳ぎはうまい。体温は哺乳動物のなかでももっとも低いものとして知られ、24~35℃の間で変化することが観察されている。フタユビナマケモノの妊娠期間が263日と長いのも、この体温の低さと関係があると考えられている。1産1子が普通で、寿命はホフマンナマケモノの飼育例では32年という記録がある。
[齋藤 勝]