日本大百科全書(ニッポニカ) 「キホウボウ」の意味・わかりやすい解説
キホウボウ
きほうぼう / 黄魴鮄
armored searobins
硬骨魚綱スズキ目キホウボウ科Peristediidaeの海水魚の総称、およびそのなかの1種。熱帯から温帯にかけて分布し、80~760メートルの海底にすむ。日本では南日本に15種ほどいるが、種類数は熊野灘(くまのなだ)や土佐沖に多い。体が骨質板で包まれ、多くの棘列(きょくれつ)がある。吻(ふん)には2本の長い棘(とげ)が前方へ向かって突出する。口は頭の下面に開く。下顎(かがく)に長いひげがある。胸びれ下部にある離れた軟条は2本。全長は20~30センチメートルのものが多い。胸びれの離れた軟条で歩くように移動しながら、海底にいるアミ類、小エビ類、多毛類などをひげで探して、吸い込むようにして食べる。おもに秋から冬に底引網で漁獲されるが、量的には少なく、ほとんど利用価値はない。
和名キホウボウPeristedion orientaleは、前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)に棘がなく、吻の突起は細長くてとがり前方へ向かって開くことで、他の種と区別できる。青森県以南、富山県以南、東シナ海に分布し、水深120~500メートルにすむ。最大で全長31センチメートルほどになるが、普通は13~19センチメートルのものが多い。
[落合 明・尼岡邦夫]