日本大百科全書(ニッポニカ) 「キースラー」の意味・わかりやすい解説
キースラー
きーすらー
Frederick John Kiesler
(1890―1965)
オーストリア出身のアメリカの建築家、舞台装置家、彫刻家。彼が主唱した「終わりのない(endless)」空間構想は、合理主義の幾何学的空間意想に鋭く対立して異彩を放った。生地ウィーンの工科大学および美術アカデミーで学び、1920年代に入り、建築家A・ロースに協力すると同時に、オランダの「デ・ステイル」のグループと結んで頭角を現す。25年のパリ装飾博覧会での「空間都市」の提案で一躍国際的に知られるようになり、26年アメリカへ移住。以来ジュリアード音楽学校の舞台監督を引き受け、ステージ・デザインに腕を振るうとともに、コロンビア大学建築研究所の所長も務めた。建築設計にフィルム・ギルド・シネマ(1930)、ユニバーサル・シアター(1933)、今世紀美術ギャラリー(1942)など。第二次世界大戦後の彼の仕事でもっとも注目されたのは「エンドレス・ハウス(終わりのない家)」計画(1959)であり、その自在で不定形なプランと有機的な形と空間の輪郭で注目を集めた。晩年に実際に建てられた建物としてはエルサレムの死海写本のための神殿(1959)などがある。
[長谷川堯]