日本大百科全書(ニッポニカ) 「クジュラ・カドフィセス」の意味・わかりやすい解説
クジュラ・カドフィセス
くじゅらかどふぃせす
Kujūra Kadphises
生没年不詳。1世紀に北西インドを支配し、クシャン朝を創始した王。漢訳は丘就郤(きゅうしゅうげき)。カドフィセス1世ともいう。クシャン人のことを中国の史書は「月氏(げっし)」または「大夏(たいか)」として伝えているが、彼らはもと中央アジアのサカ人ないしトカラ人に属していたと思われる。彼はまずヒンドゥー・クシ山脈一帯の部族を平定したのち、インドに侵入し、カブールやタクシャシラーの地を征服したという。帝国の基礎を固めてからはローマとの通商を積極的に進めた。彼が鋳造した貨幣のなかにはローマのそれを模したものが発見されており、クシャン帝国において拡大した経済活動と軍事的発展の跡をうかがわせる一方、ヘレニズム文化の影響を受けたことを示している。
[山折哲雄]