日本大百科全書(ニッポニカ) 「クジラウオ」の意味・わかりやすい解説
クジラウオ
くじらうお / 鯨魚
whalefish
硬骨魚綱クジラウオ目クジラウオ科Cetomimidae、アンコウイワシ科Rondeletiidae、アカクジラウオダマシ科Barbourisiidaeの海水魚の総称。全長は普通5~40センチメートルで、頭部が大きく、後方へ細まる。また、鱗(うろこ)がなく、一様に暗褐色または橙紅(とうこう)色でぶよぶよしており、口が大きく、自分と同じくらいの魚などを食べることもあり、胃は大きく拡張する。目は退化してきわめて小さい。これらの特徴がクジラを連想させる珍しい形態の魚である。背びれと臀(しり)びれに棘条(きょくじょう)がなく、体の後方で尾びれの直前の上下に対在する。側線感覚系は発達しており、水の振動に敏感なことを示している。発光器を備えているものもある。世界中の深海から5属20種ほど報告され、日本近海からはイレズミクジラウオCetomimus compunctus、ホソミクジラウオCetostoma ragani、アカチョッキクジラウオRondeletia loricata、アカクジラウオダマシBarbourisia rufaが報告されている。多くの種類は数個体しか発見されていない。
クジラウオ目には、前述の3科のほかに、ソコクジラウオ科Megalomycteridae、リボンイワシ科Eutaeniophoridae、シャチブリ科Ateleopodidaeなどが入れられることがあるが、これらは、いわゆるクジラウオとは形態的な違いがかなりあり、生態もよくわかっていない。クジラウオ類の分類学的位置はまだ確定しておらず、キンメダイ目に分類する学者もいる。現在、硬骨魚綱の真骨上目のなかで、進化の程度が中位である中位群に分類することは一般的に認められている。
[上野輝彌]