小笠原諸島の母島南東方(北緯25°付近)からヤップ島北東方(北緯12°付近)に至る三日月状の海溝。全長は約2550kmである。海溝底は一般に深く,水深9000mを超える所も多い。とくに,グアム島の南で海溝がほぼ東西に走る部分は深く,水深1万m以上の部分が1950年代にイギリスのチャレンジャー(8世)号やソ連のビチャージ号によって発見され,チャレンジャー海淵と呼ばれて世界最深部とされていた。しかし,1983年に海上保安庁水路部の調査船〈拓洋〉による精密調査の結果,最深部はこれまでの報告と少し違って,北緯11°22′24″,東経142°35′30″にあり,水深は1万0924±10mであることがわかった。
海溝沿いの浅い地震活動は日本海溝ほど激しくなく,巨大地震は知られていない。深発地震面は海溝軸からマリアナ島弧付近までは約10度のゆるい傾斜をもつが,その下で突然急傾斜となり,鉛直に近い所もある。この面に沿って太平洋プレートがフィリピンプレートの下に沈み込んでいると考えられる。海溝の陸側斜面には堆積物は薄く,比較的古い,島弧深部の岩石が露出している所もある。太平洋プレートの沈み込みにつれてマリアナ島弧側の海溝斜面はけずられ,沈降していると考えられ,このような沈み込みをマリアナ型と呼んで,ペルー・チリ海溝や南海トラフのように陸側斜面が押し上げられ,海溝堆積物が付加されつつあるチリ型沈み込みと区別することがある。
執筆者:小林 和男
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北太平洋の西部、マリアナ諸島の東沖に南東に大きく弧状に張り出し連なっている海溝。長さ約2550キロメートル、幅は平均70キロメートルであるが、広い部分では150キロメートルを超える。全域にわたり水深が6000メートル以上あり、とくに南西部が深く、地球上の最深所(2004年時点)であるチャレンジャー海淵(かいえん)やビチャージ海淵もこの部分にある。最深部は1万0920メートル(北緯11度19分、東経142度15分)。プレートテクトニクスの面からみると、太平洋プレートとフィリピン海プレートとの間の沈み込み帯subduction zoneに位置している。また北太平洋西部に連なる千島、日本、小笠原(おがさわら)各海溝の延長上にあり、これらとともに一連の沈み込み帯を形成している。そのため、近年、マリアナ海溝は海洋地球物理学、とくにプレートテクトニクスの研究対象として大きく取り上げられている。なお、1960年J・ピカールとドン・ウォルシュDon Walsh(1931―2023)とがトリエステ号でチャレンジャー海淵の潜水に成功している。
[半澤正男]
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…陸地と海洋の割合は前者で49.0%:51.0%,後者で9.4%:90.6%となり,前者の陸半球には全陸地の約84%が含まれる。
[海の深さ]
世界の海洋の深度は,平均約4000mであるが,世界で最も深い記録は,太平洋のマリアナ海溝にあり,1万0920mにも達する。一般に海面から約200mの深さまでは陸地の延長とみられ,大陸棚と呼ばれる(図2)。…
※「マリアナ海溝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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