日本大百科全書(ニッポニカ) 「クチンスキー」の意味・わかりやすい解説
クチンスキー
くちんすきー
Jürgen Kuczynski
(1904―1997)
旧東ドイツの経済学者、経済史家。父は統計学者ロベルト・ルネ・クチンスキー、夫人マルゲリーテ・クチンスキーも経済学者。ベルリン大学、ハイデルベルク大学を卒業後、アメリカに留学、1930年代にはドイツ労働総同盟で統計学者として活躍した。ナチス政権樹立後は非合法活動に従事し、36年イギリスに亡命。第二次世界大戦後46年に帰国してからフンボルト大学の経済史教授、同大学経済史研究所長、科学アカデミー経済史研究部長を歴任。マルクス主義経済理論を基礎とする統計的・実証的研究を行い、著作は、社会科学、人文科学の多方面にわたっているが、わが国では、とくに、労働者状態史の研究者、窮乏化法則の実証家として知られる。その体系的著作『資本主義下の労働者状態史』は、亡命時のイギリスで『産業資本主義下の労働者状態小史』として発刊されて以来、3回の改訂を経て、38巻40冊本で刊行された(1960~72)。主著としてはそのほかに、『ドイツ経済史』(1948)、『世界経済史』(1952)、『ドイツ児童労働史』(1958)、『労働の歴史』(1962)、『労働者階級の成立』(1967)、『国家・経済・文学』(1969)などがある。
[村橋克彦]
『良知力訳『労働の歴史』(1963・法政大学出版局)』▽『良知力訳『労働者階級の成立』(1970・平凡社)』▽『宇佐美誠次郎訳『国家・経済・文学』(1971・法政大学出版局)』▽『照井日出喜訳『クチンスキー回想録1945―1989 正統派の異端者』(1998・大月書店)』