クラグイェバツ(その他表記)Kragujevac

改訂新版 世界大百科事典 「クラグイェバツ」の意味・わかりやすい解説

クラグイェバツ
Kragujevac

セルビア共和国の都市。レペニツァ河畔にあり,人口14万6568(2003)。15世紀に建設された。1818-39年までセルビア公国の首都として栄え,その間セルビア初のギムナジウム,印刷所,劇場,リツェイ(リセ),士官学校がつくられた。51年には軍需工場も生産を始めた。以後シュマディア地方の経済・文化の中心地として今日にいたる。1941年10月21~23日,占領中のドイツ軍は当地将校暗殺の報復学童など7000人を銃殺した。この惨劇は文学や映画《抵抗の詩(うた)》などで繰返し語られ,広大な記念墓地は一種の巡礼地となっている。国内最大の自動車工場〈ツルベナ・ザスタバ(赤旗)〉はフィアット系。ほかに農機具,食品,皮革工場,単科大学(機械・経済学部),酪農研究所,労働運動博物館などがある。ユーゴスラビアでは1876年にクラグイェバツで行われた最初のデモ〈ツルベニ・バーリャク(赤旗)事件〉を自主管理思想の萌芽と考え,1969年以来毎年ここで自主管理者集会を開いている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラグイェバツ」の意味・わかりやすい解説

クラグイエバツ
くらぐいえばつ
Kragujevac

セルビア共和国の中央部を占めるシュマディア地方の中心都市。モラバ川支流レペニツァ川沿いに位置する。人口18万0912(2001推計)。交通の要所で、1885年にベオグラード―ニシュ線と接続する鉄道が敷設された。セルビア公国の首都(1818~39)として、ベオグラードより先に劇場、印刷所、陸軍学校などが設置された。19世紀末から20世紀にかけて社会主義運動の一中心地をなした。1941年10月21日、占領中のドイツ軍により、当地の将校を暗殺された報復として、学童を含む7000人の虐殺が行われた悲劇の町としても有名。この事件を題材にしたのがD・マクシモビッチ『血の伝説』で、この作品に基づいて映画化された『抵抗の詩(うた)』(1969)は日本でも上映された。犠牲者の遺品を集めた博物館、広大な記念公園もある。自動車工場ツルベナ・ザスタバCrvena Zastava(赤旗)のほか、農機具・食品・皮革工場、大学、労働運動博物館、酪農研究所などがある。

田村 律]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android