日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラベ」の意味・わかりやすい解説
クラベ
くらべ
Antoni Clavé
(1913―2005)
スペインの画家。バルセロナに生まれる。同市の美術学校で学んだ後、挿絵とポスターの仕事を行った。1934年にはポスターなどにコラージュの手法を試みる。スペイン内戦(1936~1939)勃発(ぼっぱつ)とともに人民戦線に加わったが、国民戦線の勝利により1939年フランスに亡命、以後パリに定住。ビュイヤール、スーチン、ピカソらの影響を受け、絵画に親しみつつ挿絵画家、舞台装置家として活躍。1954年から絵画に専念、油彩とコラージュを混用した風刺性と装飾性のある『戦士』『騎士』『王様』『女王』などのシリーズを描き、1960年代なかばからは大画面に移った。1984年にはベネチア・ビエンナーレのスペイン館で単独展示を行った。多様なマチエールと炸裂(さくれつ)する色彩がスペイン的な暗い背景のうえで激しいコントラストをみせるクラベの画面は、装飾的であるとともに現代の苦悩を表明している。1989年には重要な版画作品がカタルーニャ州政府の芸術財団に寄贈された。また、1992年のセビーリャにおける万国博覧会の際には、カタルーニャ州館で個展を行っている。さらに、1993年にはバルセロナのカタルーニャ州政府の建物に「アントニ・クラベの部屋」が開室され、『バルセロナへ』(1992)などの作品が設置された。数多くの国際賞を受賞。タペストリーや版画作品、彫刻も多く残した。
[神吉敬三・岡村多佳夫]