改訂新版 世界大百科事典 「クレーデ点眼」の意味・わかりやすい解説
クレーデ点眼 (クレーデてんがん)
Credé's method of antisepsis
分娩時に,出生した新生児の両眼に2%の硝酸銀液を点眼すること。この出生直後の新生児への点眼の目的は,女性の子宮頸管や腟に淋菌がいると,そこを通って生まれてくる新生児の眼に淋菌が感染し,ひどくなると淋菌による全眼球炎,すなわち淋菌性膿漏眼をおこし失明に至るので,これを防止するためである。以前は女性性器に淋菌をもっていることが多かったので,膿漏眼による新生児の失明も多かった。そこで1880年にドイツの産婦人科医クレーデKarl S.F.Credé(1819-92)がこの方法を考案し,非常に有効であったことから,世界各国で行われるようになった。しかし,抗生物質が開発された今日では,新生児の膿漏眼はほとんど姿を消してしまったので,分娩時の雑菌による新生児眼瞼炎を予防,治療する目的で出生直後に抗生物質の点眼をするようになり,これが広い意味でのクレーデ点眼といわれている。
執筆者:島田 信宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報