日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロシギウナギ」の意味・わかりやすい解説
クロシギウナギ
くろしぎうなぎ / 黒鴫鰻
avocet snipe eel
[学] Avocettina infans
硬骨魚綱ウナギ目シギウナギ科に属する海水魚。東北地方から茨城県までの太平洋沖、沖縄舟状海盆(しゅうじょうかいぼん)(トラフ)、九州・パラオ海嶺(かいれい)、小笠原(おがさわら)諸島、台湾南部沖など南緯10度以北~北緯50度付近までの温帯・熱帯海域に分布する。体は側扁(そくへん)して著しく細長く、尾部は延長する。未成熟魚と雌では吻(ふん)と上下両顎(りょうがく)はくちばし状に長く突出し、上顎は上方へ、下顎は下方へ湾曲し、両顎はかみ合わない。歯はきわめて小さい円錐歯(えんすいし)で、密生し後方に向いている。上顎の後端は目の後縁を越える。肛門(こうもん)は胸びれのはるか後下方に開く。背びれは胸びれ基底の上方から、臀(しり)びれは肛門の直後から始まり、それぞれ尾びれとつながる。背びれ条は279~432本、臀びれ条は240~372本。鱗(うろこ)はない。側線孔は比較的大きく開口し、1列に並び、側線孔数は181~201個。体は一様に濃褐色。最大全長は約62センチメートル。日周期移動し、昼間は水深500~1000メートル層で生息し、夜間は50メートル以浅に上昇することもある。海底から離れて垂直姿勢で静止して、長いくちばしにサクラエビ類の長い触角をからませて摂餌(せつじ)していると考えられている。レプトセファルス(葉形(ようけい)幼生)期を経てから変態し、体は細長くなる。雄は成熟すると上下両顎が短くなり、歯がなくなり、胸びれが後退する。底引網や中層トロール網でまれにとれる。
[尼岡邦夫 2019年6月18日]