グィードダレッツォ(その他表記)Guido d'Arezzo

改訂新版 世界大百科事典 「グィードダレッツォ」の意味・わかりやすい解説

グィード・ダレッツォ
Guido d'Arezzo
生没年:991ころ-1033以後

イタリアの音楽理論家。ポンポーザ(フェラーラ近郊)のベネディクト会修道院で教育を受け,アレッツォやローマに住み,晩年はアベラーノの修道院長だったのではないかと考えられている。グィードは,等間隔で水平に3~4本の直線を引き,その線上と線間に音符を書き入れて音高を表示する記譜法(音高の表示法では,今日の5線譜と原理は同じ)を考案し,この記譜法でグレゴリオ聖歌を記譜し,また,ウトut,レre,ミmi,ファfa,ソルsol,ラlaの6音の階名唱法を始めて楽譜視唱を容易にした人と言い伝えられている。彼の残した理論書としては《ミクロログスmicrologus(小論理)》などが知られており,この著作には,多声音楽が平行オルガヌムから自由オルガヌムに移行する時代の新しい対位法についても記されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「グィードダレッツォ」の意味・わかりやすい解説

グイード・ダレッツォ
ぐいーどだれっつぉ
Guido d'Arezzo
(992/995ころ―1050ころ)

中世イタリアを代表する音楽理論家。その名により、トスカナ地方アレッツォの出身と推定されるが、確証はない。1020年以前にポンポーサのベネディクト会聖マリア修道院に入り、4線を用いた新しい記譜法による交唱頌歌(しょうか)集を起草した。1023年ごろアレッツォ近郊に移住し、25、26年ごろ主著『ミクロログス(音楽小論集)』を著した。28年ごろ教皇ヨハネス19世に召されてローマに行く。その後、ヨハネ頌歌からとった6音節(ut, re, mi, fa, sol, la)による階名唱法の基礎を定めた『未知の歌についての書簡』を著し、アレッツォ近郊アベラーノの修道院長として世を去ったと思われる。階名唱法を容易にする「グイードの手」と称する方法は、おそらく後代の案出である。

樋口隆一

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グィードダレッツォ」の意味・わかりやすい解説

グィード・ダレッツォ
Guido d'Arezzo

[生]995頃.アレッツォ
[没]1050.5.17. アベラーナ
イタリアの音楽理論家。今日の記譜法が生れる直接の動機となった2線間を3度の音程間隔として構成された記譜法を提唱。また楽譜に書かれた歌を,ヘクサコードにあてはめた6つのシラブル (ウト,レ,ミ,ファ,ソ,ラ) のみで歌わせることにより容易な視唱の方法を発案,のちの階名唱法が生れる基礎をつくった。主著『ミクロロゴス』 Micrologus Guidonis de disciplina artis musicae。

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世界大百科事典(旧版)内のグィードダレッツォの言及

【音名】より

…音楽上,音の高さを呼ぶための名で,音組織内の各音には一定の振動数が定められており,それぞれ固有の名で呼ばれている(図)。
[西洋]
 現在,西洋音楽に用いられている音名は,ほとんどが11世紀にグィード・ダレッツォが体系づけたものを基礎としており,アルファベットによって音高を表し,オクターブごとにこの名が繰り返される。オクターブの違いを表す方法にはいろいろあるが,ヘルムホルツの考案(1865)によるものがいちばん多く使われている。…

【キリスト教文学】より

…イエス・キリストの死後,はやくも1世紀の半ばから,使徒たちの布教活動にともない,ローマおよび帝国の西半へもキリストの信仰は浸潤していったが,その伝道者はギリシア語を常用する者が多かったので,西方教会でもギリシア語の勢力が強かった。キリスト教文学が最初の1~2世紀間もっぱらギリシア語によっていたのは,このような事情にもよるものである。しかしラテン語使用の端を開いた雄弁家テルトゥリアヌスより以前に,ラテン語訳聖書《ウルガタ》の原型,いわゆる《イタラ》は始められていたらしい。…

※「グィードダレッツォ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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