グラファイト化合物(読み)グラファイトカゴウブツ

化学辞典 第2版 「グラファイト化合物」の解説

グラファイト化合物
グラファイトカゴウブツ
graphite compound

黒鉛(graphite)は,Cの二次元ポリマー層が平行に重なった構造であるが,その層間に各種のイオン,原子分子が入ってできた化合物のこと.次の2種類に大別される.【】電気伝導性があるもの(場合によってはむしろ層間距離が増大する):挿入型化合物(intercalation compound of graphite).黒鉛の層間に入るものが,アルカリ金属,各種のハロゲン化物,酸化物,硫化物オキソ酸などの場合がある.
(1)アルカリ金属の化合物;たとえば,CnLi(n = 6,12,18など).Liと黒鉛とを一緒に加熱反応させると得られる.ほかのアルカリ金属化合物も同様にして得られる.普通,大きい原子の化合物のほうが,CnMのnは大きい.黒鉛の平行なCの層間にMは規則的に並ぶ(普通,黒鉛の C6 六角形の中心の直上に位置する).ただし,配置は化合物によって異なり,また,各層間でなく,一層おき,または多層おきに入ったものもある.原子の挿入により黒鉛の層間距離は増大する.電気伝導性は黒鉛より増加し,黒鉛の層面に直角方向で増大する.常磁性,反応性が大きい.K8Cは0.16 K で超伝導状態になることが知られている.
(2)ハロゲン化物との化合物;黒鉛と各ハロゲン化物を封管中で加熱反応させるか,非水溶媒中で反応させると生成する.層間に入るのは,HF,ClF3,BrF3,XeF6,BaCl2,CuCl2,HgCl2,BCl3,AlCl3,FeCl3,CoCl3,ZrCl4,PtCl4,SbCl5,WCl6,UCl6,CuBr2など多種である.これらも黒鉛より電気伝導性が増したものがある.
(3)酸化物,硫化物,オキソ酸などとの化合物;SO3,CrO3,Sb2S3,H2SO4,H3PO4,HClO4なども層間に入る.【】電気伝導性がないもの:入った原子が黒鉛のCと強い結合をつくり,黒鉛の層状平面ひだを生じている.酸化物(酸化グラファイト(graphite oxide)またはgraphitic acidという)と,フッ化物(フッ化グラファイト)がこれに相当する.
(1)酸化物;黒鉛を濃硝酸と硫酸との混合物,または発煙硝酸とKClO4(またはKMnO4)との混合物と反応させると生成する.淡黄色の不安定な固体.黒鉛の各層の平面が,面に直角方向にC-O結合を生じるためにひだを生じて凹凸になる.層間距離も増大して,6~7 Å に達する.
(2)フッ化物(graphite fluoride);CnF(n = 1,および2 < n < 5).黒鉛とフッ素(または F2 + HF)を直接反応させると得られる.反応条件,温度により,生成物はC4F,(CxF)n,(CF)n の3種類に大別される.C4Fは室温近くで黒鉛に気体状のHF + F2 を反応させると得られる.青黒色の固体で,電気伝導性がいくらか残る.黒鉛の層平面構造が残るが,面間隔は5.34 Å 程度で黒鉛よりずっと大きい.黒鉛の層に直交する方向にFがCと結合し,黒鉛の層平面はひだを生じている.いずれも電気伝導性は小さく,溶媒に不溶.室温では安定である.約600 ℃ 以上で分解が起こる.[CAS 1399-57-1:(C4O(OH))n][CAS 11113-63-6:(CxF)n(x = 1,2)]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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