日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケステン」の意味・わかりやすい解説
ケステン
けすてん
Hermann Kesten
(1900―1996)
ドイツの小説家。ペシミスティックなのらくら者を主人公にした小説『ヨーゼフは自由を求めている』(1928。クライスト賞受賞)、『放埒(ほうらつ)な人間』(1929)で新即物主義(ノイエ・ザハリヒカイト)の旗手として登場。『幸福な人たち』(1931)、『香具師(やし)』(1932)、『異国の神々』(1949)などは、懐疑的な時代批判、洗練されたエロティシズムとユーモアによって国際的な読者をつかんだ。そのほか、『ゲルニカの子供たち』(1939)やスペインの歴史を題材にした『フェルディナントとイサベラ』(1936)などの長編三部作、そして現代ドイツ作家論『わが友詩人たち』(1953)、小説『60歳の男』(1972)、劇作、エッセイ、翻訳など多数の著作がある。1933年から亡命生活、40年にアメリカの市民権を得た。1974年ビューヒナー賞受賞。
[前田敬作]
『小松太郎訳『ヨゼフの誕生日』(1951・六興出版社)』▽『飯塚信雄訳『現代ドイツ作家論 わが友詩人たち』(1959・理想社)』▽『鈴木武樹訳『ゲルニカの子供たち』(1963・白水社)』▽『小松太郎訳『性にめざめる頃――ヨーゼフは自由を求めている』(角川文庫)』▽『小松太郎訳『異国の神々』(角川文庫)』▽『小松太郎訳『カザノーヴァ』(角川文庫)』▽『M・ライヒ=ラニッキー編、鈴木武樹ほか訳『狂信(ナチス)の時代・ドイツ作品群第3 創られた真実:1945~1957年』(1969・学芸書林)』▽『戸川敬一編訳『ペン 現代ドイツ作家集』(1974・エンデルレ書店)』▽『谷口広治監訳『照らし出された戦後ドイツ――ゲオルク・ビューヒナー賞記念講演集』(2000・人文書院)』