ゲゼル(読み)げぜる(英語表記)Arnold Lucius Gesell

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲゼル」の意味・わかりやすい解説

ゲゼル
げぜる
Arnold Lucius Gesell
(1880―1961)

アメリカの児童心理学者。ウィスコンシン州マルマの生まれ。ウィスコンシン大学およびクラーク大学で教育学、心理学を学び、哲学博士の学位を得たのち、エール大学で小児医学を学び医学博士の学位をも取得。1911年同大学精神臨床学主任(助教授)となり、1915年同教授。この間、エール大学児童発達臨床研究所を創設し所長となる。同大学停年退職後は、ゲゼル児童発達研究所を創設して、死に至るまで研究を続けた。乳幼児の行動の詳細な観察によって、その発達過程を定型化し、年齢ごとの発達標準をつくり、これに基づく発達診断テストを標準化した。そのために、一方視スクリーンの適用、写真、映画記録の分析など優れた観察手法を編み出し、さらに一卵性双生児を交互に訓練して学習と成熟との関係を解明する双生児相互統制法を創始するなど、多くの業績をあげた。インドの狼(おおかみ)少女の記録の紹介で話題をまいた。

[藤永 保 2018年7月20日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゲゼル」の意味・わかりやすい解説

ゲゼル
Gesell, Silvio

[生]1862.3.17. セントビス
[没]1930.3.11. ブランデンブルク
ベルギー生れのドイツの商人経済学者。 1887~1914年アルゼンチンのブエノスアイレスに,その後はドイツやスイスに在住した。彼の研究主題は貨幣問題で,研究の契機はブエノスアイレス在住中に起った貨幣インフレーションといわれる。彼の主張の特色は,J. M.ケインズに影響を与え,近代経済学史上重要な役割を果した自由貨幣学説にある。それは金,銀などの貨幣素材から貨幣を解放し,貨幣の流通速度を速め,購買力を増加させるという学説で,これによって景気の不安定性を克服しうるとした。同時に利子地代などの不労所得の廃止を唱え,経済学的な面から総合的な社会改革案を打出している。主著『貨幣の国有化』 Die Reformation im Münzwesen als Brücke zum Sozialistischen Staat (1891) ,『自由土地および自由貨幣による経済の自然的秩序』 Die natürliche Wirtschaftsordnung durch Freiland und Freigeld (1911) 。

ゲゼル
Gesell, Arnold (Lucius)

[生]1880.6.21. ウィスコンシン,アルマ
[没]1961.5.29. ニューヘーブン
アメリカの児童心理学者。エール大学教育学助教授,児童衛生学教授,児童発達研究所所長を歴任し,乳児より青年にわたる行動の発達に関する長期的 (追跡的な部分を含む) 研究を通じて,子供の成長の過程の法則と機序を明らかにしようと努めた。すなわち,生きた成長しつつある「有機体」として心を考え,この動的な成長の像には,周期,自己調節の動揺性 (螺旋形の発達過程) ,素質的な個性という3つの特質のあることを明らかにした。主著『幼児行動のアトラス』 An Atlas of Infant Behavior (1934) ,『誕生より5年間』 The First Five Years of Life (40) ,『5歳から 10歳までの子供』 The Child from Five to Ten (46) ,『若者,10歳から 16歳』 Youth: The Years from Ten to Sixteen (56) 。

ゲゼル
Gezer

古代パレスチナの都市。ラムラの近くに位置し,現イスラエルのテルゲゼル。人跡は新石器時代に始り,次に青銅器時代の大都市の遺跡が残る。この遺跡は旧約聖書やトゥトモス3世からメルネプタハにいたるエジプト新王国時代 (前 1567~1085頃) の記録に現れる。前 10世紀以後ヘブライ人の都市として栄え,とりわけソロモン王が建設したとみられる城門とケースメート式城壁が知られる。その後,ハスモン (マカベア) 朝時代には砦が築かれた。現在は遺跡のみが残り,20世紀初頭以降発掘調査が行われ,住居跡,深さ 31mの水利施設,前 10世紀頃の農事暦を記した陶片なども出土した。

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