アメリカの児童心理学者。ウィスコンシン州に生まれる。ウィスコンシン大学,クラーク大学で教育学,心理学を学びPh.D.を得,後イェール大学で医学を学び医学博士(M.D.)の学位を得た。1915年イェール大学教授となる。1911年以来イェール児童研究所を主宰,48年退職後はゲゼル児童発達研究所を創設,児童の発達研究において,研究法の開拓をはじめ多くの業績を残すとともに後継者を育てた。彼の研究を代表するのは発達診断法developmental diagnosisの確立と,それによる発達規準の作成である。統制された場面で,一定の検査用具を用い,写真,映画撮影などの方法を駆使して,乳幼児の行動型の変容過程を精密に分析し,正常な発達の一般的傾向を明らかにした。また,双生児統制法の実験により,行動発達において訓練の効果よりも成熟因の大きいことを示し,成熟論者とされるが,育児,教育への論考においては,社会的・文化的環境への論及も深い。
執筆者:清水 民子
ベルギー生れのドイツの経済学者。ブエノス・アイレスで商人として成功したが,1880年代のアルゼンチンにおける激しいインフレーションをみて,貨幣の価値の安定を求めて貨幣制度の改革を唱えた。その代表作は《自由な土地と自由な貨幣とによる自然的経済制度》(1916)であるが,金・銀などに依存しない国家貨幣の創造を通じて経済の安定化を指向する考え方は世界中に多くの信奉者をもち,予言者的な存在となっていった。貨幣の純粋理論や景気循環のメカニズムについても先駆的な業績を残したが,理論的な完成度という点からアカデミックな世界では無視された。ケインズは《一般理論》のなかでゲゼルの業績にくわしく言及し,いくつかの重要な点で《一般理論》の考え方を先取りするものであることを強調した。
執筆者:宇沢 弘文
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
アメリカの児童心理学者。ウィスコンシン州マルマの生まれ。ウィスコンシン大学およびクラーク大学で教育学、心理学を学び、哲学博士の学位を得たのち、エール大学で小児医学を学び医学博士の学位をも取得。1911年同大学精神臨床学主任(助教授)となり、1915年同教授。この間、エール大学児童発達臨床研究所を創設し所長となる。同大学停年退職後は、ゲゼル児童発達研究所を創設して、死に至るまで研究を続けた。乳幼児の行動の詳細な観察によって、その発達過程を定型化し、年齢ごとの発達標準をつくり、これに基づく発達診断テストを標準化した。そのために、一方視スクリーンの適用、写真、映画記録の分析など優れた観察手法を編み出し、さらに一卵性双生児を交互に訓練して学習と成熟との関係を解明する双生児相互統制法を創始するなど、多くの業績をあげた。インドの狼(おおかみ)少女の記録の紹介で話題をまいた。
[藤永 保 2018年7月20日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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