日本大百科全書(ニッポニカ) 「こしけ」の意味・わかりやすい解説
こしけ
帯下(たいげ)、すなわち腟(ちつ)内容のこと。俗に「おりもの」ともよばれる。腟内容は多数の細菌(卵巣機能の正常な成人女性では乳酸桿菌(かんきん)が主である)のほか、腟粘膜から剥離(はくり)した細胞と白血球の融解したもの、血管に富む腟粘膜組織からの漏出液、頸管(けいかん)分泌液などの混合物である。この量および質は年齢によって、また個人的にも相当の違いがあるので、正常なものと病的なもの(いわゆる帯下)とをはっきり区別することは困難な場合が多いし、帯下感もまた人によって異なる。
帯下には病的なもの以外に生理的なものもあり、生理的に頸管粘液や腟内容が増量するのは月経周期のうちの排卵期と月経前で、妊娠のときも後半期にとくに増える。生理的腟内容は糊(のり)状または濃厚なクリーム様の白色物(白帯下)であり、排卵期の頸管粘液は無色透明で、粘稠(ねんちゅう)度は水様に低下する。なお、産褥(さんじょく)中の帯下は悪露(おろ)とよばれる。
一般に、帯下は腟から外陰に流出したときに初めて自覚するが、腟外に流出したばかりの帯下が淡黄ないし黄色、または泡沫(ほうまつ)状、米かす状、粒子状で、外陰部にかゆみや痛みを伴うとき、帯下が悪臭を有するとき、また褐色や血性を呈する場合は病的と考えてよい。このようなときは、性器のどこから出たものかの判断も含めて検査が必要である。病的なものはカンジダ腟炎やトリコモナス腟炎、老人性腟炎などによるものが多い。子宮頸部の炎症(腟部びらん)のこともある。血性の場合は機能性子宮出血など卵巣ホルモンの機能失調によることも多いが、とくに閉経後に認められたときには子宮頸癌(がん)、子宮体癌など悪性腫瘍(しゅよう)を考慮して慎重な癌検査が必要である。
[新井正夫]