コッセルの原子価理論(読み)コッセルノゲンシカリロン

化学辞典 第2版 「コッセルの原子価理論」の解説

コッセルの原子価理論
コッセルノゲンシカリロン
Kossel's theory of valency

W. Kosselが1917~1921年に提出した原子価理論.KosselはN.H.D. Bohr(ボーア)の原子モデルにおける電子配置にもとづいて,原子がなんらかの原因で電子を失うか取り入れるかして希ガスと同じ電子配置をとるとき,その原子は安定になると考えた.Na原子は電子を失えばArと同じ電子配置の Na になり,Cl原子は電子を取り込めばやはりArと同じ電子配置の Cl になる.したがって,NaClはNa Clとして安定に存在できる.この場合,正負両イオンの間には静電気的な引力fがはたらく.

ここで,z1z2 はそれぞれのイオンの価数,e電気素量rは正負イオン間の距離,ε0真空誘電率である.Kosselはこのようにしてイオン結合の形成を説明した.かれはまた,共有結合の形成についてもモデルを提出したが,このモデルは現在ではほとんど認められていない.[別用語参照]原子価の理論

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

法則の辞典 「コッセルの原子価理論」の解説

コッセルの原子価理論【Kossel's theory of valence】

イオン結合のモデルを,ボーアの原子模型をもとに考えて構築した原子価の理論.原子が何らかの原因で電子を獲得するか放出するかにより,希ガス構造の電子配置をとるならば,その結果生じるイオンは安定となり,静電引力で反対符号のイオンと安定な結合を生成するので,安定な化合物として存在可能となるというものである.なお,コッセルはこの後に共有結合についても同様な見地からのモデルを提出したが,こちらは,ルイス‐ラングミュアの八隅子説(オクテット理論*)が出た後はほとんど認められていない.

出典 朝倉書店法則の辞典について 情報

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