コブウシ(読み)こぶうし(その他表記)zebu

翻訳|zebu

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コブウシ」の意味・わかりやすい解説

コブウシ
こぶうし / 瘤牛
zebu

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ウシ科の動物。肩に肩峰(けんぽう)といわれる隆起(こぶ)のある熱帯種のゼビューの俗称で、たくさんの品種がある。また、インドのウシはすべてゼビューであることからインドウシともいう。赤道を挟んで北緯・南緯各30度、年間平均気温20~22℃以上の地域に広く分布する。起源は古く、紀元前3000年ごろにインドにみいだされ、アフリカに紀元前に導入されている。大きさは品種によりさまざまで、雄の肩高1.3~1.5メートル、体重390~500キログラムほどである。耐暑性、抗病性を保持し、熱帯適応力が高いので、南北アメリカおよびオセアニアに19世紀以降に育種素材として導入され、現在では熱帯アジア、熱帯アフリカ、アメリカ合衆国南部、オーストラリア北部、中央・南アメリカ諸国で利用されている。栄養状態のよいウシの肩峰の中には脂肪が蓄積され、飼料不足に耐える用意がある。胸から腹にかけて巨大な肉垂れが深く垂れ下がり、皮膚は弛緩(しかん)している。作業能力が高く、役用として使われるほか、乳用、インド以外では肉用にも利用される。毛色は灰白色のものが多く、角(つの)は品種により多様で、耳は大きく垂れている。

[西田恂子]

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改訂新版 世界大百科事典 「コブウシ」の意味・わかりやすい解説

コブウシ (瘤牛)
zebu
humped cattle
Bos taurus indicus

肩に肩峰という隆起のあるウシ。ゼビュー,犎牛(ほうぎゆう)とも呼ばれる。肩のこぶは胸椎の棘突起(きよくとつき)が高くのび,その上にひし形筋がかぶさったもので,栄養状態の良いものではここに多量の脂肪が蓄えられる。原産地はインドであるがアフリカ,東南アジアにも広く分布し,多くの品種がある。一般に胸や腹の皮膚がゆるく垂れ下がっており,耳も大きく垂れている。暑さに強く,熱帯性の風土病にもかかりにくい。代表的な品種にインド原産のカンクレージKankrej種,オンゴールOngole種,ギルGir種,レッド・シンディRed Sindhi種,サヒワールSahiwal種,アフリカ原産のアルシArusi種,アフリカンダーAfricander種などがある。近年その耐暑性,抗病性の高さが注目されて,熱帯地域に適した肉牛品種の改良に利用されており,ブラーマンBrahman種,サンタ・ガートルディスSanta Gertrudis種などが作出されている。
ウシ
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百科事典マイペディア 「コブウシ」の意味・わかりやすい解説

コブウシ

ゼビュー,肩峰(けんぽう)牛とも。偶蹄(ぐうてい)目ウシ科の哺乳(ほにゅう)類。肩の大きな肉瘤(にくりゅう)が特徴。角は大きく上方に伸び,耳はたれている。体質強健で,熱帯性の風土病に強く,粗食に耐えるため,東南アジア,インド,パキスタン〜アフリカで飼われ,乳用,役用とされる。カンクレージ,ギール,ハリカール,ブラーマンなどの品種があり,中国,台湾の黄牛はコブウシとこぶなしウシとの交雑でできたもの。日本牛,朝鮮牛はこれに近縁といわれる。
→関連項目ウシ(牛)

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世界大百科事典(旧版)内のコブウシの言及

【ウシ(牛)】より

…偶蹄目ウシ科の哺乳類。世界各地で乳用,肉用,役用などに飼われる家畜牛(イエウシ)で,ヨーロッパ系とアジア系(コブウシ系)がある。ウシはまた,バンテンガウアヤクなどの野生牛を含むウシ属Bosの総称,またはさらにバイソンスイギュウを含むウシ亜科Bobinaeの総称ともされる。…

※「コブウシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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