日本大百科全書(ニッポニカ) 「サクソルン属」の意味・わかりやすい解説
サクソルン属
さくそるんぞく
saxhorns
サクソフォーンの発明者として知られるアドルフ・サックスAdolph Sax(1814―1894)が考案し、1845年に特許をとった一連の金管楽器。サックスの意図は、さまざまな構造をもつ金管楽器を統一して、吹奏楽における均質な中心的楽器群をつくることにあった。彼はビューグル(18世紀に狩猟ホルンから発展し、19世紀初めにキー・システムやバルブ・システムがつけられた金管楽器)を基礎として、7種類の楽器を考案した。いずれも管形やバルブ・システムの統一により音色や奏法が均一で、円錐(えんすい)管の占める割合が大きくマウスピースが深いため、柔らかな溶け合いやすい音が出る。すべて移調楽器で、E♭またはB♭管。記譜上の音域はF♯3―C6であるが、低音域の三つの楽器は現在では実音で記譜される。
7種のサクソルンのうち、もっとも高いソプラニーノの音域のもの(E♭)は小ビューグル、ソプラノのもの(B♭)はビューグルとよばれるが、今日ではビューグル・バンド以外ではほとんど使われない。アルトのもの(E♭)はフレンチ・ホルンの演奏容易な代用として吹奏楽で使われることもある。テナーとバリトンのもの(B♭)は管形、管長ともに同じで、同音域だが、後者のほうが管が太いため音色が豊かで、派生楽器であるユーフォニアムとよく似ている。バス(E♭)、コントラバス(B♭)は吹奏楽で用いる中バス、大バスだが、管弦楽用のチューバに改良され、中バス、大バスも近年ではチューバとしてまとめられている。
[前川陽郁]