日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルト」の意味・わかりやすい解説
アルト(Roberto Arlt)
あると
Roberto Arlt
(1900―1942)
アルゼンチンの小説家、劇作家。移民の子として生まれる。様々な職についたあと、ジャーナリズムに入り、社会主義、写実主義作家たち、いわゆる「ボエド・グループ」と親交を結ぶ。1926年、都市に住む人間の倫理観、絶望感を描いた自伝的色彩の濃い小説『怒れる玩具(がんぐ)』を発表。その後も、ブエノス・アイレスを舞台に、都市と住民というテーマに風刺を交え、幻想的な雰囲気を漂わせさえする小説『七人の狂人』(1929)、『火焔(かえん)放射器』(1931)、短編集『傴僂(せむし)』(1933)などを出すが、やがて戯曲に専念し、空想世界に閉じこもる少女を描いた『三億』(1932)、妻を殺した劇作家が殺人のありさまを戯曲にする『幻想を作る男』(1936)などの戯曲を発表して演劇界に新風をもたらした。
[安藤哲行]
アルト(音楽用語)
あると
alto イタリア語
alto フランス語
alt 英語
alto 英語
Alt ドイツ語
音楽用語。混声四部合唱における上から2番目の声部、女声合唱の場合には、もっとも低い声部のことをいう。また今日では、そういった声部に相応した音域を歌う女性のもっとも低い声種をもさす。語源はラテン語のaltus(高い)に由来するが、これは、中世の多声楽曲において、その基本となる声部(テノール)より高い声部をよぶのに用いられたためである。転じて、大小のある同族楽器のなかで、ソプラノとテノールの間にあるものをアルト(たとえばアルト・リコーダー)などとよぶ。さらに、五線譜表の第3線上にハ音記号を置いた音部記号をアルト記号という。第3線が1点ハ音となり、元来は合唱のアルト声部用であったが、今日ではビオラやアルト・トロンボーンなどの楽器のための楽譜にも用いられている。
[黒坂俊昭]