吹奏楽(読み)スイソウガク

デジタル大辞泉 「吹奏楽」の意味・読み・例文・類語

すいそう‐がく【吹奏楽】

木管金管楽器主体とし、打楽器を加えた編成で演奏される音楽。

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精選版 日本国語大辞典 「吹奏楽」の意味・読み・例文・類語

すいそう‐がく【吹奏楽】

  1. 〘 名詞 〙 木管および金管楽器を主体とし、打楽器などを加えた合奏音楽。もともと軍楽隊あるいは宗教儀式用の音楽として発達し、民衆の音楽としても普及した。楽団編成も一〇人から五〇人ぐらいまで種々ある。管楽。
    1. [初出の実例]「陸軍軍楽学校諸氏が吹奏楽(スヰソウガク)なれば」(出典:落梅集(1901)〈島崎藤村〉七曜のすさび・土曜日の音楽)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「吹奏楽」の意味・わかりやすい解説

吹奏楽
すいそうがく

字義どおりにいえば管楽器による音楽のことであるが、打楽器や一部の弦楽器が加わることもある。ドイツ語のブラスムジークBlasmusikからの訳語と思われる。ただし、吹奏楽を演奏する団体を日本ではブラスバンドというのが一般化しているが、これは明らかに英語のbrass band(金管楽器楽団)の片仮名書きであって、ここには誤訳と概念の混同がみられる。英語には吹奏楽にあたる語がなく、military bandmusic)が吹奏楽の総称として用いられ、今日では楽器編成によって区別してウインド・アンサンブルwind ensemble(管楽アンサンブル)、ブラス・アンサンブルbrass ensemble(金管アンサンブル)、ウインド・オーケストラwind orchestraまたはコンサート・バンドconcert band(いずれも吹奏楽)などとよんでいる。

[大崎滋生]

歴史

吹奏楽という演奏形態は、地域的には広く各地にみられ、また歴史的にも古代にまでさかのぼりうるが、しかしことさら弦楽器を排して管楽器を中心とした編成というのは、軍隊と結び付いて発展することが多かった。ヨーロッパ中世に吹奏楽が導入されたのは11~13世紀の十字軍の遠征によるといわれており、やがて王侯貴族や都市国家が、吹奏楽を式典や合図の音楽として野外で利用するようになる。またリコーダーの合奏など、楽器によっては室内で楽しまれる編成も存在した。18世紀後半から19世紀にかけて、木管楽器にも金管楽器にも、より多くの確実な音高を得られる鍵(けん)装置が導入ないし増加され、より多くの可能性が吹奏楽に生まれた。こうして宮廷における室内音楽としても、とりわけ南ドイツやオーストリアで、ハルモニームジークHarmoniemusikという名で管楽器中心の音楽が発展した。

 しかし封建体制の漸次的な崩壊とともに、そのような場はしだいに減っていった。それにとってかわるように吹奏楽の重要な発展の場となるのは、18世紀後半に際だってくるヨーロッパ各国の軍事力拡張に伴って存在の意味を増した軍楽隊である。その結果、吹奏楽には士気の高揚とか団結、勇壮などといったことが必然的に求められて、同時代の他の音楽と様式を鋭く異にしていった。しかもそれは、多人数の金管楽器を中心とする吹奏楽の華やかな音響とも、よく一致していた。

 このようにヨーロッパでは、とくに19世紀以後の吹奏楽の発展は軍楽隊を中心としたが、それに対して軍楽隊の演奏活動がかなり制限されたアメリカにおいては、学校や私設の吹奏楽団が人々の関心を集め、20世紀にかけて吹奏楽は隆盛を極めた。そうしてスーザら吹奏楽専門の作曲家が多数輩出した。こうしたアメリカの影響が世界に広がったこともあり、また軍楽隊の使命が第二次世界大戦後相対的に低下したこともあって、吹奏楽はふたたび軍楽色を失っていったといえよう。

[大崎滋生]

日本

明治時代の初めに軍楽としての吹奏楽を取り入れた日本でも、学校や職場で仲間たちといっしょに趣味として楽しむといった目的をもつ吹奏楽団が相次いで誕生し、1939年(昭和14)には大日本吹奏楽連盟が結成されるに至った。第二次世界大戦後はとりわけアメリカからの指導もあって、吹奏楽活動が学校教育や生涯教育の視点から見直され、全国的に活発な活動が繰り広げられている。2001年(平成13)現在、社団法人全日本吹奏楽連盟に加入している団体は1万3516団体にのぼっている。

[大崎滋生]

『音楽之友社編・刊『吹奏楽講座』新版全8巻(1983~84)』『磯田健一郎編『200CD 吹奏楽名曲・名演――魅惑のブラバン』(1999・立風書房)』『斎藤好司編著『オーケストラ・吹奏楽のための明解音楽小辞典』(2000・ドレミ楽譜出版社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「吹奏楽」の意味・わかりやすい解説

吹奏楽 (すいそうがく)

吹奏楽器(管楽器)による音楽をさし,弦楽あるいは管弦楽に対応する名称。この意味では管楽という言葉も用いられる。しかし吹奏楽というと一般には,木管楽器(フルート,ピッコロ,オーボエ,クラリネットサクソフォーン,ファゴットなど)と金管楽器(コルネット,トランペット,ホルン,ユーフォニアム,トロンボーン,チューバなど)に打楽器(大太鼓,小太鼓,シンバル,ティンパニなど)と,ときには弦バスを加えた40~70人の編成の楽団による合奏音楽をいう。吹奏楽にはまた目的に応じ,(1)シンフォニック・バンド,(2)ミリタリー・バンド,(3)マーチング・バンドなどがある。(1)は管弦楽に似た多様な色彩感を得るため楽器の種類を増し,(2)は野外演奏のため音量の増大をはかり,(3)は行進,パレードなどショー的要素充実のため華やかな音色と音量,また運動の容易を目的とした編成で演奏される。一方,イギリスに発生したブラス・バンドbrass band(金管バンド)はサクソルン族を中心とした金管楽器と打楽器でパイプ・オルガンのような美しい響きをねらったバンドである。吹奏楽はドイツ語のBlasmusikの訳で日本で〈吹奏楽団〉のことをブラスバンドと呼ぶのはこの転用といわれる。しかし最近は,前述の金管バンドとの混同を避けるために,この呼び名は使われなくなってきた。

 吹奏楽の歴史は非常に古く,前2500年ころと推定されるメソポタミア,エジプト出土のリード楽器があり,前1世紀のローマ帝国では,宮廷,宗教儀式,軍隊で管楽合奏が行われている。また日本の雅楽のなかには,5~10世紀ころの中国・朝鮮系の吹奏楽の一端が,きわめて良好な状態で保存されていることは注目に値しよう。しかし現代につながる〈吹奏楽〉の始まりは,トルコの〈軍楽〉だといわれる。トルコの軍楽はオーボエ系の木管楽器,トランペット系の金管楽器,ティンパニ系の各種打楽器とともに,11~13世紀に十字軍によって,さらに16~17世紀にオスマン・トルコの侵攻によって,ヨーロッパにもたらされた。ヨーロッパでも最初は軍楽隊が主体だったが,楽器が改良され演奏技術も進歩して,16世紀には軍楽以外でも管楽合奏が盛んとなった。ことに野外演奏のほかに,屋内でのターフェルムジークや舞踏音楽,あるいは教会音楽での活躍が目立ち,18世紀後半には管楽合奏の黄金時代を迎える。しかし19世紀に入ると,主役は弦楽器に移っていった。一方,18世紀半ばから始まるヨーロッパ各国の軍事力拡張と,それに伴う軍楽隊の伸張によって,楽器の発達が促進され,効果的な楽器編成の研究も進み,演奏者の育成も行われて,軍楽として息を吹き返し,19世紀末には吹奏楽団に対する熱が最高に達した。ことにアマチュアにまで流行を見せたアメリカでは,20世紀初頭にはダンス・バンドも管楽合奏が中心となって大流行した。第2次世界大戦後はしだいに軍隊色を脱し,ポピュラーからクラシック音楽まで,各種各様の編成による吹奏楽団が盛んに活動している。日本でも小学校から大学,あるいは職場や地域住民による吹奏楽団があり,その数は5000を超えるといわれる。また一部の都市や自衛隊,消防庁,警察等も専門職の吹奏楽団編成による〈音楽隊〉を置いている。
軍楽隊
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「吹奏楽」の意味・わかりやすい解説

吹奏楽
すいそうがく
brass band

吹奏楽器 (管楽器) を主体とし,これに打楽器を加えた合奏。編成,人数とも一定の規則がなく自由。したがって,状況に応じて楽器の入替えが自在にできるように編曲したものが多い。ブラス・バンドの名称がしばしば使われるが,ブラス・バンドは正しくはトランペット,ホルン属の管楽器のみの合奏をさす。

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音楽用語ダス 「吹奏楽」の解説

吹奏楽

管楽器と打楽器で構成される合奏形態。日本ではブラスバンドとも呼ばれるが、ブラスバンドとは本来、金管楽器で構成される合奏形態をいう。

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