日本大百科全書(ニッポニカ) 「サビキン」の意味・わかりやすい解説
サビキン
さびきん / 銹菌
rusts
担子菌類サビキン目に属するカビ。シダ類その他の植物類に寄生してさび病をおこし、菌こぶや天狗巣(てんぐす)状の奇形を生ずることが少なくない。菌糸は宿主の細胞間で成長し、細胞内に吸器を形成して栄養を吸収する。サビキンには、菌糸細胞内に単相の1核を含む単相菌糸体と、2核を含む重相菌糸体とがある。この2種類の菌糸体が同種の宿主に寄生する場合を同種寄生菌とよび、2種類の菌糸体に生理的な差があって宿主が異なる場合を異種寄生菌とよぶ。コムギクロサビキンの単相菌糸体はメギの葉に寄生し、重相菌糸体はコムギに寄生する。サビキンにおいては一般に、黄褐色のさび胞子(Ⅰ)、ついで夏胞子(Ⅱ)、冬胞子(Ⅲ)等の栄養胞子、および担子胞子(Ⅳ)を順に生ずる。
[寺川博典]
生活環
サビキンの生活環には三つの型がある。その一つは長環型で、前述のⅠ~Ⅳの段階のすべてを経る。Ⅳから生じた単相菌糸は宿主の葉に侵入し、葉の表面の表皮下にとっくり形の精子器(柄子(へいし)器)を形成し、その内壁の菌糸から分生子形成と同じ方法で不動精子を生ずる。不動精子は昆虫類によって運ばれる。精子器から外に突き出た菌糸(受精菌糸)に、他の精子器から生じた和合性のある不動精子がつくと、その核を受け取って、やがて葉の裏面にさび胞子器ができ、重相のⅠをつくる。これが散布されて生じた重相菌糸は、同種または異種の宿主に侵入し、Ⅱを生じ、さらにⅢを生ずる。Ⅲは、2核が癒合して複相核となってから越冬し、早春に発芽する。発芽管内では減数分裂が行われ、横の隔壁を生じ、直列4室の担子器ができる。この各室からは小柄が生じ、その先にⅣが形成される。
生活環の二つ目は半環型であり、Ⅱの段階を欠く。三つ目が短環型で、ⅠかⅢの段階を繰り返す。
[寺川博典]
分類
サビキン科の冬胞子は風で散布されるか、または寒天質に埋まるが、メランプソラ科では宿主内にとどまって層を形成する。コレオスポリウム科では宿主内の冬胞子がそのまま担子器となり、各室から担子器上嚢(のう)が伸びて宿主から突き出し、その先に小柄と担子胞子を生ずる。
[寺川博典]