シェーレ現象(読み)しぇーれげんしょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シェーレ現象」の意味・わかりやすい解説

シェーレ現象
しぇーれげんしょう

シェーレSchere(ドイツ語)は「鋏(はさみ)」という意味であり、鋏状価格差ともよばれる。資本主義経済の発展につれて、独占的産業部門と競争的産業部門との間に、価格形成上の諸条件の優劣から価格差が拡大することをいい、これをグラフに表すと鋏を開いたような形を示すので、この名がある。シェーレ現象は一般に、工業製品価格と農業製品価格の間に著しく、農業が不況から回復するのを遅らせる原因の一つとされてきた。この場合、農業製品コストの一部をなす工業製品(化学肥料など)価格が相対的に上昇することからおこる農業所得縮小と、農産物価格の相対的下落による農工間所得格差の拡大という二面がある。いずれにしてもシェーレ現象は、従来景気変動局面に関するもので、長期的・構造的問題にはかかわらないものであった。それは長期的には、農産物(ないし一次産品)価格が非一次産品に相対的に有利な傾向が持続した事例も多かったためである。しかし最近では、資本主義動向に関する諸問題を価格面から説明するものとして、農工間だけでなく、たとえば発展途上国の一次産品価格と輸入工業品価格の問題として、広範囲に応用されるようになってきている。

[一杉哲也]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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