日本大百科全書(ニッポニカ) 「シモクレン」の意味・わかりやすい解説
シモクレン
しもくれん / 紫木蘭
[学] Magnolia liliiflora Desr.
Magnolia quinquepeta (Buchoz) Dandy
モクレン科(APG分類:モクレン科)の落葉低木ないし小高木。モクレン属の代表種で、単にモクレンともいう。葉は近縁のコブシ(二倍体)やハクモクレン(六倍体)によく似ているが、質は両者の中間。花は赤紫色で、コブシなどより遅れて、4~5月、葉の展開前から長期にわたって咲き続け、よく目だつ。四倍体である。世界中で広く栽培される花木の一つで、日本でも古くから栽培されている。中国原産である。50種以上の園芸品種があり、日本ではそのうち、全体に小形のトウモクレンや、花色の濃いカラスモクレンなどが栽植される。
モクレン属は約90種からなるモクレン科中最大の属で、常緑または落葉の高木ないし低木。染色体の基本数は19で、ほとんどの種は二倍体である。東アジアから東南アジア、北アメリカ東部から南アメリカ北部と、両大陸に隔離分布することで有名である。近縁のオガタマノキ属は花が腋生(えきせい)で雌蕊(しずい)群が顕著に有柄であるためモクレン属と区別されるが、モクレン属は花が頂生し、果実が縦に裂開することでモクレン科のほかの属と区別される(APG分類ではオガタマノキ属はモクレン属と区別されない)。温帯産落葉種のほとんどは花木、庭園樹として珍重され、とくにシモクレン類、ハクモクレン類、コブシ類、オオヤマレンゲ類が愛好されている。常緑のものでは、タイサンボクM. grandiflora L.とヒメタイサンボクM. virginiana L.がよく栽植される。これらの種間雑種もよくつくられるが、ほとんどの場合不稔(ふねん)である。漢方薬として利用するものもあり、材は一般に有用材である。
[植田邦彦 2018年8月21日]